私のマジック

私のマジック

My Magic

2008年10月20日 TOHOシネマズ六本木ヒルズにて(第21回東京国際映画祭 アジアの風)

(2008年:シンガポール:77分:監督 エリック・クー)

 最近、注目しているのは、台湾映画とシンガポール映画なのです。

特にシンガポール映画というのは、本当に多民族なんだなぁ、と思います。

人種のるつぼ・・・といってもいいかもしれません。

 この映画では、シンガポールのインド人マジシャンの父と子が出てきます。

言葉はインドのタミル語と広東語。

親子の会話はタミル語だけど、外では広東語なのです。

 ゲストで質疑応答された主演のマジシャンのポスコ・フランシスさんは、実際シンガポールでマジシャンをされている方ですが、普段の生活では、タミル語、英語、広東語、北京語、マレー語を話すのだそうで、それが当然なのです、と言われていました。

日本では考えられないことですね。

 このタイトルにあるマジック・・・・というのは、実は、ガラスを口で割ったり、食べたり、炎を吹いたり、針を体に刺したり、ガラスの破片の上に寝て・・・といった危険がキワモノ的なマジックで、それがまず、迫力~~~~~~~~。

(映画の後の質問で当然ですが、「痛くないんですか?」とありましたが、フランシスさんいわく「集中力があれば痛くない。左足が痛くても右足に集中すれば痛さ感じないでしょう・・・」と、言われてましたが、ええええええ?そうかなぁ。

実際、映画の中では、どんな危険なマジックをやっても血は出ないんですね。

おそるべき集中力。でも、良い子はマネしてはいけませんよ。

 さて、映画は、妻を失ってから、バーの掃除をしながら・・・・もう、酒びたりでマジックをしなくなってしまったお父さん。

わずかにかせいだお金もすぐにお酒に・・・・

小学生の息子と2人くらしですが、息子がぐれたりしないで、けなげ。お勉強のできる、おとなしい男の子。

お昼がいつも安いやきそば・・・・同級生の宿題をやって、お金をもらってる。

 ひょんなことから、父は過去やっていたマジックをやってみせると・・・・バーの出し物にしようじゃないか・・・とやくざのボスに見込まれる。

父はどんどん危険なマジックをやっていく・・・・でも息子が、ひそかに苦労していることは知らない。

息子は父が、どんな危険なマジックをやっているのか・・・・バーで働いているとしか知らない。

 お互い知らない同士・・・でも、それで家族関係がくずれることはなく、あやういバランスを保っています。

この男の子が繊細でよかったですね。

めげない健気さを持っていて、長いまつげで大きな目で、憂いを秘めていて・・・。

 しかし、やくざなボスは非情です。

もっと危険なことをやれ・・・・・とほとんど拷問のような・・・・でも、父は息子のために・・・と耐える。

普通の映画とか物語だったら、父への反抗とか、息子を育児放棄とか・・・・憎しみがからみそうなのに、この映画の特徴はそういう「憎しみ」が全くない、ということでした。

だから、反面、地味な映画になっています。父はどんなに落ちぶれていても息子を身放さないし、息子は父に絶望したりしない。

そこらへんのドラマチックになりそうな要素を、映画の軸にしなかった、というのが妙にこの映画の安定感のような、安心感のような・・・他の映画にない空気を持っていました。

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更夜飯店

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