カナカナ

カナカナ

KANA-KANA The Summer that Never was

2008年11月2日 DVD

(1995年:日本:105分:監督 大嶋拓)

 この映画は、以前レンタルビデオ屋に通っていたとき、店員さんのおすすめポップがいつもある映画で気になっていました。

 ある冷たい、雨の多いひと夏の30歳の女性と14歳の少年の物語。

同棲生活に嫌気がさして、実家に戻ってきた女性。翻訳の仕事をしている。

友人が学校の音楽の先生で、コーラスの仲間。

その友人が、学校に来なくなってしまった生徒の家に行くというので、なんとなくついていった時に出会う・・・鋭いようなさびしいような目をした中学生の男の子。

母親は不在で汚いアパートに一人暮らしをしている。

 30歳の女性はかなり気丈で、よく言えばサバサバしているけれど、結構、身勝手。でも、家はなんとなく居心地わるい。

母が出戻り扱いをするのが鬱陶しい。

 後日、コンビニで万引きをしている少年を見かけてしまい、声をかける・・・とがめる、というよりも、「家に行ってもいいかな」

 それからこの2人の不思議な、距離のあるつきあいが始まります。

男の子は、寡黙で、甘えようしない・・・でも、学校に行く気もおきず、なんとなく、少年のアパートが「2人の居場所」になってしまう。

「14歳か・・・・私はもうすぐ30歳。あと6年、20歳になるまで面倒みてあげようか?」

 この2人の取り合わせがとても「冷たい夏」のような空気を持っているのですね。

でもそんな関係は成り立たない。

少年は母の元に去ってしまう・・・・何も言わずに。

 残された女性の胸に去来するのはなんだろう・・・・夏の終わりに鳴きはじめるカナカナのかすかな声のような、さびしさ。

なんとなくちゅうぶらりんな2人をカメラは淡々と追う。

少年が、嫌うでなく、なつくわけでもない・・・猫のような少年でした。

触ると嫌がるけれど、しばらく来ないと、ぽつり・・・と「なんで来なかったの?」と言う。

 親子でもない、家族でもない、他人で、友人でもない、恋人でもない2人。

そんな関係のあやうさを冷たい夏・・・という空気で描いたところがとても好きです。

悲しいというより、本当にカナカナの声を聞いて、「あぁ、夏が終わるんだな・・・」って思ったときのような気持。

ささやかな映画ですけれど、こういう関係をいやらしくなく、おしつけがましくなく、さらり・・・と幕を引くタイミングもいいです。

カナカナは映画にでてこないけれど、夏の終わりはせつなくて~~~~そんな気持になる映画です。

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