真木栗ノ穴

真木栗ノ穴

2008年11月12日 渋谷 ユーロスペースにて

(2007年:日本:110分:監督 大川栄洋)

 大川監督の前作『狼少女』を観たのは4年前の 東京国際映画祭。(この年のTIFFは大当たり)

平日昼間で悲しいくらい観客が少なかったけれど わたしはこの映画が大好き。

映画を観ると昭和の時代で、どんな監督かと思ったら 映画の後、出てきたのは28歳の若者でびっくりしました。

去年の東京国際映画祭でこの『真木栗ノ穴』が上映されると知ったけれど、満席。

うーん、西島秀俊の根強い人気っていうか・・・ 映画って結局、俳優を見に行くものなのかなぁ・・・とちら、と思ったりしました。

 そして、やっと一般公開になりました。

大川監督って若いけれど、レトロ大好きですねぇ。

今回も、「昭和」が舞台。

出てくるお札は現代なんだけれども、携帯もパソコンも出てきません。

 売れない小説家が住む、鎌倉の切通しの近くのボロアパート。

不本意ながらも、お金のために官能小説を書きはじめる。

ボロアパートの壁に穴があり、西側の部屋には若い男、そして東側の部屋に・・・女の人が引っ越してくる。

穴は西側にひとつ、東側にひとつ・・・と穴が2つあるのですね。

 さて、隣の部屋の人・・・美しいなぁ・・・と思ってこんなことがあったらなぁ・・・って小説のネタにすると

なんと覗き見る東側の部屋でその通りのことが起き始める。

官能小説を書けば書くほど、その通りになっていく。

 あくまでも、主人公は覗くだけ。

これは、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』だなぁ~ ですが、本でいっぱいの主人公(名前が真木栗)の壁から一生懸命覗く横に、積み上げた本の一冊で、 あの角川文庫版の古い黒の背表紙の横溝正史の文庫の表紙が、ほんとに一瞬、アップになるんです。

 ああ、監督は乱歩より横溝なんだなぁって・・・

でも、その本のタイトルが思い出せないんですううううう~~~~~ あああ~~~これこれ!この表紙絵よ~~~って 嬉しかったのですが。

 『東南角部屋二階の女』も古いアパートの話で、西島秀俊は、ボロアパートがよく似合う。

こんなにボロなアパート似合う人、いないんじゃないかなぁ。

あと頭痛薬を水を飲まずにボリボリ噛むのがね。

 だんだんおかしなことになっていく、小説家。

原稿用紙に万年筆で小説を書いているけれど どんどんその字がぐずぐず・・・判読不可能になってしまうところが怖いようなんだけど、ちょっとユーモラスでもあるからこの映画はホラーじゃありません、わたしの中ではね。

 わたしはとなりの部屋の女の人より、 ちょっとだけ出てくるキムラ緑子さんが印象に残っています。

「私、45歳なの」といって、真木栗の・・・に・・・突然・・・になって・・・してくるの。

ちらり、と出てくるだけですごく艶っぽいですよ。

ある意味、トリックスター的な存在で、同性ながら、ドキドキしましたね。

 また、花火大会を遠くから見るときに

真木栗が・・・

「花火は一瞬で消えるからいい。あんなものがいつまでも空にあったらたまらない」・・・とぼそ、と言うあたりがとても好きです。 

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