いつか分かるだろう

いつか分かるだろう

Plus Trad Tu Comprendras/One Day You'll Understand

2008年11月24日 有楽町朝日ホールにて(第9回東京フィルメックス)

(2007年:フランス=ドイツ:89分:監督 アモス・ギタイ)

特別招待作品

 アモス・ギタイ監督の新作映画が観られるのも東京フィルメックスならではです。

 アモス・ギタイ監督の映画というのは、その背景となるものがとてつもなく深く、極東の日本人にはわかりません・・・という奥の深さがあります。

過去、『フリー・ゾーン』という映画について書こうと、色々調べたら、政治、宗教、歴史、人種・・・とんでもなく複雑怪奇であって、感想書けなくなったことがありました。

 今回はフランスを舞台にしていますが、冒頭、ジャンヌ・モローが家でつけているテレビで流れているのは、ナチスの戦犯、クラウス・バルビーの裁判の様子です。

『クラウス・バルビー 3つの人生』というドキュメンタリーを観て、びっくりしたのですが、この裁判でフランスでの過去のユダヤ人迫害に対する政府の対応が変わった・・・ということです。

映画の冒頭は、ナチスによって迫害、死んでしまった人々の名前が刻まれた記念碑が映されます。

もう、何もなくなってしまって、ただ、名前だけ残っている。

 主人公となるのはカトリック教徒の40歳の男性です。記念碑に祖父母の名前を見つけたヴィクトールは、妻と子供2人という普通の生活をしている。母がジャンヌ・モローです。

亡き父の手紙から、語られることのなかった亡き祖父母の住んでいた家・・・何があったのか、調べるようになります。

実は、母、ジャンヌ・モローは、ユダヤ人でユダヤ教信者でした。それを隠して、息子はカソリック信者に・・・という育て方をしてきた。

 この何も語らなかった母、亡くなってしまった祖父母、40代の息子夫婦・・・そして子供たち・・・4代にわたって、「今だに癒えることのない傷」を描きます。

 これといって、残酷なシーンもなく、涙ながらに訴えるシーンもない。

自分の死が近いことをうすうす察した、祖母は、孫を初めてユダヤ教会に連れていく。なにもわからない子供たち・・・その子供たちに、「わたしはユダヤ人なの。ユダヤ信者なのよ」と淡々と語る祖母、迫力。

次の世代には悲劇を繰り返させたくない・・・そういったメッセージも感じるのですが、それがおしつけがましく言葉で語ることなく、映像で描き切った・・・・でも、こういう宗教の根深さというのは、日本人のわたしからするとびっくりする・・というのが一番です。 

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