木のない山

木のない山

Treeless Mountain

2009年11月27日 有楽町朝日ホールにて(第9回東京フィルメックス)

(2008年:韓国=アメリカ:89分:監督 ソヨン・キム)

コンペティション作品

審査員特別賞受賞

 同じコンペティション作品の『黄瓜』が、全編、ロングショット、固定カメラで通した映画だったのの、その反対にある映画。

この映画は、まず、顔のアップの映画です。

 韓国のある幼い姉妹が、母のもとを離れ、親戚をたらいまわしにされてしまう・・・・反抗するにはまだ幼すぎる姉妹。

なにがなんだか、わからない・・・・・そんな自然の表情を、どうやって演技指導したのか?と思うくらい大きく映し出します。

脚本があるけれども、覚えさせることは無理で、カメラの向こうで、こうやって、ああやって・・・と口で指導しながらの撮影だったそうです。

 最初は、おねえちゃんは小学校で勉強しているのですが、父が失踪してしまって、母は、伯母さんの家に子供をあずけて、父を探しに行くという。

おねえちゃんはまだまだ4歳くらいの妹の面倒をよく見るのよ、妹はおねえちゃんの言うことをよく聞くのよ・・・・

そして、ブタの貯金箱を渡して、これがいっぱいになったら戻ってくる・・・と言ってバスに乗って、どこかへ行ってしまう。

 優しいお母さんにくらべ、伯母さんは、子供嫌いでしぶしぶ・・・という感じですが、それでもいじめたりはしない。

でも、不安は隠せない子供の表情。

特にもう小学生のおねえちゃんは、なんとなく、うっすらと「大人のシビアさ」を見抜いている。

妹が、最初は、水色のドレスのような洋服を着ていてるんるんって歩いているのですが、だんだん、田舎に行くうちにそのお姫様ドレスが、どんどん汚れていく。

おねえちゃんは、汚れた・・・といって水洗いをするんですね。あ~それは、絶対、ドライクリーニングに・・・・なんですが。

だから、水色にふわふわの白いファーのついたドレスがどんどん、光沢をなくして、汚れていくのがなんとも。

 そして伯母さんももう、養えない・・・と祖父母のいるもっと田舎に連れていく。

おじいさんは、何があったか知らないけれど、孫を可愛がるなんてとんでもない。養えないっ!!!!と拒絶。

そこをおばあさんが、声をかける・・・「お手伝いしてくれるかな」

 子供は、可愛い、素直な面もあるけれど、反面、本能的に嘘をつく、けんかもする、いじわるもする・・・この「本能的に」というのを、見事に映画にしてしまったのがすごいと思うわけです。

 どちらかというと妹は泣いたり笑ったり・・・するのですが、おねえちゃんは、無表情に近いのですね。

理由のわからない不安を抱いているのがよくわかる無表情。でも、妹は無邪気で、なにもわからない。おねえちゃんはなんだか、がんばってしまう。もう、がんばらなくていいのに。

 でもこの映画は子供を「かわいい」とも「かわいそう」とも描いていません。

顔のアップで演技させる、ということをしていないからです。自然に出てくる、疑問の表情、困惑の表情、貯金箱のお金・・・妹がおつりもらったらお金が増えた・・・あっ、両替すればいいんだぁ~~~って気がついたときの、おねえちゃんの、やったぁって顔。

この映画は、海外では公開が決まっているそうですが、日本ではどうでしょう。もったいない気もしますけれどね。

この映画が、審査員特別賞を取ったのは十分納得です。 

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