バシールとワルツを(日本公開タイトル:戦場でワルツを)

バシールとワルツを

Waltz with Bashir

2009年11月27日 有楽町朝日ホールにて(第9回東京フィルメックス)

(2008年:イスラエル=フランス=ドイツ:87分:監督 アリ・フォルマン)

コンペティション作品

2008年度グランプリ受賞

 今年は、東京フィルメックスで上映されるものはビックリするものが多かったのですが、アニメーション長編映画がコンペティションに出品、というのもビックリでしたが、結果として、この映画がコンペのグランプリを受賞というのに、またビックリ。でも、納得。

 しかし、このアニメ・・・日本ってアニメ大国ですから、アニメの歴史もあるし、技術もある・・・世界に誇れる技術を持っている・・・といえ、わたしは、アニメ映画好きなんですが、「型にはまってしまったような、また、同じか・・・」というアニメを繰り返して、観ることはなくなりました。

 このアニメでは、カットアウトアニメーションという手法がとられているそうです。

それは、いわゆる精巧、緻密な絵でなく、手描きで、スタッフも10人と少なくCG技術にたよらず、絵を描くという手法ですね。

しかし、問題は何を描いているか・・・なので、このアニメをマットペイントのような実写とかわらないような技術で描いたら、とんでもなく違ったものになっていたと思います。

 映画は最初の5分が大事だ・・・と思うわけです。

つまり、映画のつかみ、が大切。

この映画は、暗い夜の街を狂犬が、吠えながら走っている・・・そしてその犬は、一匹、また一匹と増えていき、26匹の狂犬があるアパートの下に集まる・・・というとても、強烈で、スピーディな出だしの5分ですね。ここで、もう、何が起きるのだろう・・・とぐっと、映画にのめりこむ。

 それは、主人公の映画監督アリの見る悪夢なのですが、アリは20年前、レバノンの内戦に兵士として参加したのに、「自分が何をしたのか、覚えていない」

 そこでいろいろな人を訪ねて、当時のレバノン内戦の事実を聞きます。

 何故、レバノンで内戦が起きたのか・・・といったことははぶかれていて、その残酷、過酷な戦争体験をアニメで語る・・・という手法ですね。

もう、とにかくなんでもいいから戦車から撃ちまくれ!!!!!!

そして、挟まれるロックの音楽の使い方。

音楽をあえて使わない・・・頼らない・・・という映画がフィルメックスでは多いかな、と思うのですが、この映画は、音楽、特にロックというものを、ものすごく効果的に使っていて臨場感と、どこか「これは他人事」と当事者が考えてるのかな・・・と思わせる一種のユーモアを醸し出しています。

もう、本当にロックをこれだけ、効果的に使った映画もめずらしい。

耳を通して、脳に音楽が直撃してくるんです。脳みそ、ビリビリ~~~。

 そして最後に、少しだけ実写が入ります。

アニメで通すことも出来たのだろうけれど、監督としては、アニメ(フィクション映画)をただの現実逃避に終わらせない・・・という最初からの演出だったそうです。

そう、夢を見てきて、そして、目が覚めたら、現実が・・・というものを、本当にシンプルなことだったのですが、当たり前のことをやっているのですが、あ~、そうだったんだ・・・と本当に「目が覚める映画」です。

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