ティトフ・ヴェレスに生まれて

ティトフ・ヴェレスに生まれて

Jas sum od Titov Veles/I am from Titov Veles

2008年11月30日 有楽町朝日ホールにて(第9回東京フィルメックス)

(2007年:マケドニア=フランス=ベルギー=スロバキア:102分:監督 テオナ・ストゥルガー・ミテフスカ)

特別招待作品

 この映画はストーリーもありますが、何といっても映画全体の色合いが、油絵ですね。

どのシーンを切り取ってもそれは額縁に入れれば立派な油絵、という映像の連続。

ですから、軽いシーンはありません。どのシーンも重厚。重みがあります。

 主人公、アフロディタが住む、ヴェレスという街は、大きな工場のある地方産業都市。

両親をなくして、三姉妹が住んでいますが、姉は30代で独身・・・麻薬中毒。姉は、自称、プロバスケット選手、あまり家に寄りつかない。

そして三女のアフロディタは、言葉を失い、話すことはない。

 アフロディタが歩く街。アフロディタが住む家。アフロディタが着る服。

すべてが、色合い鮮やかにそして、落ち着いた雰囲気を持っています。

かといって華やかなのではありません。

環境汚染がしのびより、三姉妹の家には貧しさがしのびよっている。

何を考えているのか、わからないアフロディタ。その行動は、時として不思議なことをする。テーブルの上に全裸になって横たわったり・・・でも、2人の姉たちは、それをどうにかしよう・・・なんてことはしないし、言わない。

全く、妹には無関心な様子。むしろ、自分の都合のいいときだけ、アフロディタに手伝わせたり、だしに使ったりします。

何も言わないアフロディタ。

 麻薬中毒を隠して、長女は、お金持の男と結婚しようとします。次女はさっさと家を出てしまう。残されたアフロディタ。

この3姉妹・・・・セックスに対する考え方が全然違うのですね。

依存のようになっている長女、遊びのようにとらえている次女、何もしらないまま男に翻弄されてしまうアフロディタ。

 悲劇的とはいえ、これは悲劇ではなく、最後にアフロディタのとった行動には未来があるように思えます。

狭い町、狭い家から出たい・・・どうやって出るのか・・・そんな3姉妹の思惑が交差する。あくまでも美しい油絵の中で。

写真的な映画というより、絵画的な映画・・・とても美しい悲劇です。  

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