クラウド9
Wolke 9/Cloud 9
2008年11月30日 有楽町朝日ホールにて(第9回東京フィルメックス)
(2008年:ドイツ:98分:監督 アンドレアス・ドレーゼン)
特別招待作品
映画やテレビで繰り広げられるラブ・シーンは、若い美男・美女というのが多いですね。
裸になるのも、美しい若い肌でないと、ダメ・・・みたいなものが無意識にあったのだなぁ、とこの映画を観て思いました。
高齢になったら、恋愛は、ましてやラブ・シーンなんてご法度。
わたしは、いい歳した人が「いつまでも恋していなきゃね」などと言うのが大嫌いです。
口では、なんとでも言えるのですが、実際は、アイドルや偶像を追っかけたり、映画にうっとりしたり、物語の恋愛にうっとりしたりのただの「妄想」であって・・・でも、実際自分の性欲は棚にあげて、綺麗事言ってらあ・・・なんて、シビアなことを思うわけです。
しかし、この映画が描くのはずばり、高齢者の恋愛。
そして、60代、70代の男女のラブ・シーンを堂々と描く。性欲というものから目をそらしていない。
こういうことを、「変な映画」と言ってしまったら、その人は、きれいな美男美女のラブシーンだけ、追っかけていればよろしいかと。
この映画に「綺麗事がなかった」からといって怒っても、それは筋違いだし、監督はそんな観客サービスなんか考えていないと思います。
主人公の60代のインゲは、夫もいて、娘、孫までいる。
内職で、洋服の直しをしているけれども、お得意さんの70代の男性と恋に落ちる。
しかし、若者と違って、60代、70代は背負うものがとてつもなく重いのです。
好きになったからといって、いまさら離婚もできない。
結婚もできない。
いわゆる「常識はずれのとんでもない不倫」としか、周りはとらないのです。
それでも、インゲは性欲を押さえられない。
そんな迷いを持ちながら、生きていく、自分の年をいやでも身にしみながら恋をする。大変、つらい恋です。
なんという悲恋だろうなぁ。悲恋というより哀恋だなぁ。
世間はそんな「非常識」にとても冷たく、唯一、実の娘だけが、いさめることなく、黙って話を聞いている。
恋愛は楽しいだけか・・・というとつらいのよね・・・というのは、老いも若きも一緒ですが、老いになるともっと重たい。
この映画の持つ重たさは、つまり人生の重たさなんですね。
そんなことを思いました。
わたしは、この映画を作った監督、俳優他、作り手の勇気に感心します。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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