ハート・ロッカー
The Hurt Locker
2010年2月25日 サイエンスホールにて(試写会)
(2008年:アメリカ:131分:監督 キャスリン・ビグロー)
この感想を書いているのは、なんと観てから半年たった8月であります。調べたら、9月3日にDVDが発売になるとのことです。
この映画は、アメリカ・アカデミー賞を作品賞、監督賞他、最多受賞した映画です。
イラク戦争に限らず、アメリカが起こした戦争については、しばらく時間をおいてから、映画になることが多いのですが、どうも、ベトナム戦争映画のあのすさまじさ・・・・『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』などを皮切りにたくさん作られたのにくらべ、まだ、傷は癒えないというか、ちょうど、アメリカがイラクから撤退・・というニュースを聞いたばかりなので、映画には早かったのかもしれません。
一番驚いたのは、監督が女性だったことで、映画を観る限り、いわゆる「いかにも女性監督らしいわね」が一切なかったことですね。
(しかも、アカデミー賞でノミネートされたヒット映画『アバター』のジェームス・キャメロン監督の元、奥さんなのであります・・・なんか・・・アカデミー賞で元・夫婦対決・・・ですか・・・なんて)
イラク戦争、バクダットでの爆弾処理班を追いながら、3人の兵士たちの危険と隣り合わせの葛藤が緊張感を持って描かれます。
爆弾処理で殉職した上官のかわりに赴任してきたウィリアム・ジェームス二等軍曹(ジェレミー・レナー)・・・・慎重、慎重・・・ロボットを使ったりしてとにかく慎重にやってきた爆弾処理なのに、このジェームス二等軍曹は、怖いもの知らずなのか、勇気があるのか・・・危険を全く顧みず、どんどん危険な処理にのぞむ。
びっくりしたのは、処理班の部下、2名。
どんなに止めても言うことを聞かず、どんどん勝手な行動を起こす新任上司に、だんだん不満をつのらせていく2人。
爆弾処理のドキュメンタリータッチの緊張感、ざらざらとした緊張感、3人の間に流れるピリピリとした緊張感、爆弾処理のとき、必ず見物人がいて、一般人なのか、テロリストなのか・・・遠くから「アメリカがやること」をじっと見ている人々。
そして、誰が敵なのか、全くわからないまま銃撃戦に巻き込まれてしまう・・・そんな不条理。
この時のカメラがじっと動かない、そして、いつ撃たれるかわからない・・・そんな緊張感。時間が経つうちに兵士の顔にハエが止まる・・・そんな緊張感の顔のアップなど、非常にリアルであり、恐怖を感じるのですね。
ただ、ジェームス二等軍曹は、「爆弾処理、、、というスリル」中毒になっているのではないか・・・という風になっていく。
字幕で、任期一年、あと残り何日・・・と出るけれど、ジェームス二等軍曹は、また、あらたな一年・・・にむかっていく。
同じ危険を通して、3人が一致団結しました・・・などという甘い展開はなく、ただの技術兵である部下のエルドリッジは、最後の最後になってもジェームス二等軍曹をののしる。
また、軍の偉い人が、「爆弾処理の勇気、君は勇者だ、すばらしいっ」と絶賛しても、むしろ嫌そうに「ヒーロー否定」をするジェームス二等軍曹。
いまどきの戦争にもう、ヒーローはいない。敵も味方も友情もない。あるのは、ただの戦争というものだけ。
もしかしたら、今の時代にヒーローはいない。
そんな気がしました。
アカデミー賞をとったからといって「おもしろい」という事がないのは、昔からのことなのですが、やはり、アカデミー賞は一種の一番の冠なのかもしれません。
これをDVDで観る・・・というのは、あの緊張感ずいぶん、薄れてしまうのではないかと思います。
この映画はなんといっても「ざらざらとした緊張感がずっと途切れない」という体力を持った映画だと思うのです。
******追記******
この頃まではよく試写会に行っていました。まだ体力があったんですねぇ。
試写会に一番必要なのは、気力体力です。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント