トイレット
2010年9月18日 テアトル銀座にて
(2010年:日本・カナダ:109分:監督 荻上直子)
荻上直子監督は『バーバー吉野』『恋は五七五!』『かもめ食堂』『めがね』とあって、『めがね』だけ未見です。
荻上監督は、6年間カルフォルニア大学で映画を学んだ方ですが、何かのトークで
「アメリカの映画の学生なんて、もう、大監督きどりの奴が多くて、日本の女の学生なんて、全く相手にされなくて、ともだちなんて、出来なかったけれど、唯一、声をかけてくれて親しくしてくれたのは、ゲイの男の子だけだった」と話していました。
そんなアメリカで映画を学んだ時からの念願の北米で映画を撮る・・・ということで、この映画の舞台となるのは、アメリカのある小さな町です。
セリフも英語。
日本人の母を持つハーフの3人の息子娘たち・・・
母が亡くなって、母が死ぬ直前に日本から呼び寄せた祖母「ばーちゃん」(もたいまさこ)が同居することに。
グランマ・・・ではなく3人は「BAACHAN」と呼んでいます。
後、餃子が出てきますが「GYOZA」猫の名前は「センセー」「SENSEI」
ばーちゃんは英語もできず、いつも無表情。
長男は、ピアニストでしたが、精神的に弱く、この4年パニック障害で、一人で外出できず、ひきこもり。
次男は、研究所に勤めている青年ですが、ロボット・プラモデル作りが趣味で、日本のアニメ・マニア・・・人とはあまりかかわりたくない。
大学生の長女は、わがままで、パンクで、気が強い。
映画の狂言回しとなるのは、次男のロイです。生真面目な性格で、ひとり暮らしをしていたところ、火事になって、やむなく実家に戻ったら・・・が、話のはじまりです。
さて、この言葉が通じない4人とセンセーと「・・・・・」という間の多い会話が続きます。
ばーちゃんは、朝、トイレが長い。
そして、トイレのあと、ふか~いため息をつく。
母の死以来、ずっと一緒にいる長兄と妹は、もう、いつものこと・・・と気にしませんが、ロイは、不思議に思う。
そこで、研究所の同僚のインド人のアグニに聞くと・・・・
「インド人は、聖なる右手をトイレでは絶対使わない。
日本のトイレは2種類ある。和式と西洋式。
西洋式は、ウォシュレットといって、温水が出てしかも、温風がかわかすんだ。日本の最新テクノロジーだぞ。
全く、君たちアメリカ人は自分の国が一番だとばかり。他の国のことなど知ろうともしない」
「・・・君の情報はすごいな・・・」
「情報じゃない。「知識」だ」
さて、3人は少しずつ、長兄は、家にあった古いミシンから、妹は、実はばーちゃんはエアギターが好きであるということから、ばーちゃんとの距離を縮めていきます。
実はばーちゃんは、何故か金持で、「おねだり」するとドル札がびっしり入った財布から・・・こずかいおねだり・・・というのは、祖父母と孫ならではの「おねだり」ですね。親よりも孫という関係は、なんだかんだいって、じーちゃん、ばーちゃんは、孫には甘い・・・というのが、そうそう!と思うところ。
こだわり屋のロイには、「ばーちゃん・・・は、母さんも子供のころ別れた・・最近になって探し出した???」
本当に自分の祖母であるか・・・こっそりDNA判定・・
すると・・・・
この映画はいろいろなところでアイディアの勝利ともいえるのですが、普通、見逃してしまう、または、気にも留めないこと、意外と日本人は日本のトイレの最新テクノロジーに慣れてしまった・・・という点をついているなど、観察力が優れた、繊細さももちあわせる映画です。
もともとは、外国のスタッフが日本に来た時、何に感動したかというと、トイレの素晴らしさだったことから、監督のこの映画のアイディアが浮かんだそうですが、オリジナル脚本であることも、大きな魅力のひとつです。
原作ものをどう、料理するかも映画の醍醐味ではあるのですが、映画を一から立ち上げるという点で、オリジナル脚本映画というのはとても好きですね。
*****追記*******
この映画を観た映画館、テアトル銀座は閉館し、今(2018年)はないのですが、私の大好きな映画館のひとつでした。中学生の時から、憧れの映画館。大好きな映画館。懐かしい映画館です。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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