恐怖の報酬

恐怖の報酬

LE SALAIRE DE LA PEURE

2013年4月14日 東京都港区みなと図書館にて(みなと図書館映画会)

(1953年:フランス=イタリア:148分:監督、脚本 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)

 図書館に行ったら丁度映画を上映するというので観た映画です。

名前は知っていても観たことがなかった映画シリーズとでもいいますか、カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭グランプリで主役は当時、シャンソン歌手だったイヴ・モンタンですがカンヌ映画祭男優賞を取ったのはイヴ・モンタンの相方となるシャルル・ヴァネル。

 「ニトログリセリンを運ぶ危険なトラック運転」という内容は知っていましたが、いや、ちゃんと最初からきちんと観るのがいいですね。

なんとファーストシーンはゴキブリ。ここでもうびっくりさせられます。ゴキブリがうようよいるような場末の町というか、そこが飛行場なんです。

場所は特に名前は出てこないのですが中米のある国。そこにはヨーロッパ各国から移民がやってきていて仕事にあぶれている。

ここはアメリカ資本の石油会社の油田がありいわば出稼ぎに来たものの、仕事はなく、その日暮らしをしている男達。

 トラック運転のスリリングさは後半で前半が酒場を中心に色々な人間模様が続きます。

フランス人のマリオ(イヴ・モンタン)、イタリア人のルイジ(フォルコ・ルリ)、ドイツ人のビンバ(ペーター・ヴァン・アイク)などがくすぶっています。

酒場の娘、マリアが監督の妻、ヴェラ・クルーゾーですがセリフのある唯一に近い女はマリアくらいで、後は男くさいむんむんのアクションになります。マリアはまぁ、なんというかサービスというか、マリオに惚れているけれど気の強い娘、と描かれています。

そこにホンジュラスからフランス人の男、ジョー(シャルル・ヴァネル)がやってきます。

 口笛だけでお互いフランス人だとわかり、意気投合するのはマリオですが、他の国の男たちからは白い眼で見られる。

それを挑発するように自信たっぷりの親分肌を持つジョー。中年というより壮年という貫禄を持つのがジョーです。

そんなとき、油田で火災が発生する。アメリカの石油会社は5000キロ先の火災現場に消火の為のニトログリセリンを1トン、トラックで運ぶことに決め、危険満載なのであぶれ者から4人、2台のトラックでニトログリセリンを運ぶ運転手を一人2000ドルで募集する。

 最終的に決まったのはマリオとジョーのフランス組、ルイジとビンバのイタリア=ドイツ組です。

ちょっとの刺激で爆発するニトログリセリンを500キロずつ積んだトラックで運ぶ。

 何故前半が飛行場のある町と酒場の人間模様にあてているのか、というとこれは今だとまどろっこしいから飛ばすのでしょうが、後に起きるトラックの運転で人間関係も変わってくるその伏線となる事柄が出てきます。

例えば、ファーストシーンのあと、穴ぼこだらけの水たまりをジープが跳ねるようにして走っていく。

そこで、ここの土地の路は舗装された道路など滅多にない・・・・少しでも揺れたら爆発のニトログリセリンを積んだトラックは?

 危険な山道あり、穴だらけの「なまこ板」と呼ばれる長い道あり、次々と2台のトラックは困難にさらされる。

しかも一番頼りになりそうで、自分から自分は出来るとうそぶいていたジョーがびびりはじめてしまうのです。

恐怖で報酬をもらうんだ・・・と言いますが、若いマリオは最初の尊敬や親しみがだんだん軽蔑に変わって行く。

それは前半でどれだけ「ジョーが強気だったか」が様々なシーンで描かれているので、だんだん年のせいにしたりする

卑怯さが際立ちます。

 ロケ壮大ですし、乾いた閑散とした荒れ地を行くトラックには危険がいっぱい。イヴ・モンタンもよくこんな体力的にきつい役を引き受けたものだと感心します。カメラもパンはしないで切り返しの連続で緊張感があります。

ぱっとマリオの顔が写ると、別の人物にカットが切り替わり、緊迫感は酒場からあります。

 それにしてもゴキブリで始まり、ウィンナワルツで終わるってすごい事考えますよね。感心しきり。煙草を吸うシーンがたくさんありますがさすが「煙草を吸う演技」がぴし、と決まっている。(最近の映画にないのが、吸い慣れたようにきれいに煙草を吸うシーン)

俳優たちの身体を張った演技も油田の火災も特撮ではなく迫力の演技と撮影。見応えあります。やはり名画と言われる映画は名画。

 

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