バートン・フィンク
BARTON FINK
2013年11月4日(DVD)
1991年:アメリカ:116分:監督 ジョエル・コーエン
制作、イーサン・コーエン、監督、ジョエル・コーエンの知る人ぞ知る、コーエン兄弟映画。
もうね、コーエン兄弟映画は、覚悟して観なければなりません。
なにを覚悟か?とにかく映像美であって、ストーリーを書き出す事はほとんど無意味で、いくらでも深読みできるし、逆に言えば、何が何だかわからない、のです。それは観る前からもうわかっていました。
1941年のアメリカ、ニューヨークで舞台作家をしているバートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)
ハリウッドに呼ばれて映画のシナリオを書いてみないか?映画は演劇と違って金になるぞ・・・・と
行ってみると、B級レスリング映画の娯楽要素の高い、社会派演劇作家のバートン・フィンクががっかりしてしまう
俗っぽいものを書け!と言われて、ホテルに滞在。
書き出せなくて、いらいらしているときにとなりの部屋から笑い声が・・・いらいらしてつい注意したのをきっかけに知り合った隣部屋の男、チャーリー(ジョニー・グッドマン)保険のセールスをしていると言う。
なにが凄いってこの滞在するホテルの廊下の不気味なこと。
建物を見所にする映画というのがあって、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』って何が怖いってあの冬の雪に閉ざされた別荘という空間が怖いのです。
この映画ではホテルの全景は出ません。フロントと廊下と部屋だけ。暑い夏・・・壁紙がゆるゆるゆる・・・とはがれてくる。靴磨きはタダなのですが、人の気配が全くしないのに部屋のドアの前にずらりと並ぶ靴。
書きたくないものを書かなければならない焦りで、と訳のわからない事態に巻き込まれていくバートンを演じたジョン・タトゥーロのおどおどと同時にいらいらする目。
謎の隣人、チャーリーは太っているのですが、暑い暑いと言って、そのYシャツの脇汗が怖いくらいにじんでいる。
不気味なのはハリウッドの映画人たちが妙なハイテンションだったり、気が狂っているとしか思えない表裏があるのを、じっと耐えているバートン・フィンク。
もう、何度もしつこくでてくるホテルの廊下は暗い、落ち着いた雰囲気で人の気配がない、あの世とこの世をつなぐ通路のよう。
ここから先は、きっと地獄。かといって、天国への道はないのね、きっと。どっちに転んでも地獄のような雰囲気をどんどん出していく、その課程がこの映画、と言ってしまっていいでしょう。
カンヌ国際映画祭では、三冠を達成して評価されたのですが、興行的にはいまひとつ、という完全、映画祭マニア向け。
この映画は、謎解きよりも、深読み好き向け。デビット・リンチ監督のような狂気まではいかないのだけれど、妙に気持いい不気味さがとても好きです、はい。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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