簪(かんざし)

簪(かんざし)

2013.11.10(DVD)

(1941年:日本:70分:監督 清水宏)

 2003年は、清水宏監督生誕100年で、映画祭東京フィルメックスで特集上映がありました。

この年の観客賞をとったのがこの『簪(かんざし)』で、いつか観たいと思っていました。

図書館にDVDがあったのを見つけた時は、迷うことなく即、借りました。

実は、清水宏監督は小津安二郎監督と同じ年、ということでこの年は小津安二郎監督特集はすごかったらしいのです。

しかし、生涯で164本もの映画を撮りながら、現存しているフィルムは数少ないと言われている清水宏監督に注目した所が

やはり、東京フィルメックス・・・上映はもちろん、京橋のフィルムセンターです。

 原作は井伏鱒二で、あるひと夏の温泉地のスケッチのような映画で、なんともいいムゥドなのです。

温泉宿には、ひと夏を過ごす人びとがおり、もう顔なじみです。

女性客の団体がうるさいと、口うるさい学者先生はぷりぷり。

しかも、簪が湯の中に落ちてしまい、湯治中の復員兵、納村(すご=く若い笠智衆)の足にささり怪我をさせてしまう。

 その簪を落とした人から連絡があって、怪我をさせたとを知り、お詫びに来ると電報が来ます。

怪我しても、簪が湯の中に落ちていたとは情緒があっていいですね・・・という好青年、納村は言いますが、学者先生はさんざインテリぶってる割には、そのご婦人が「美人か不美人か?」で情緒的かは決まると妙に俗っぽい事を言い出すのです。

 そこにお詫びに来たのが恵美(田中絹代)もちろん美人であり、色めき立つ逗留客???

しかし、どうも恵美は東京でどういう暮らしをしているのかわからないし、なぜか、東京には戻れないらしい。

謎の女性ですな。

 しかし、湯治場はのんびり、としていてなんだかんだ言って、湯治の客たちがユーモラスに描かれて、至福感があります。

さて、夏が終わり湯治客は帰ってしまいますが・・・・・

 フィルムの状態は決していいとは言えないのですが、いいですなぁ~情緒とユーモアがあって、人間味にあふれているという

陳腐な言葉しか出てこないのが残念で、ギリギリとした雰囲気はなく、なんとものんびり、ゆったりした雰囲気を保ち続け、

カメラはなめらかに移動し、その絵の奥行きが素晴らしい。

1941年というともう、戦時色強かったはずですが、原作、井伏鱒二らしい、のほほんとしたムゥドが全体を包んでいます。

いや、よかったなぁ、清水宏監督、すばらしい。

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