皇帝円舞曲

皇帝円舞曲

The Emperor Waltz

2013年11月16日 DVD

(1948年:アメリカ:107分:監督 ビリー・ワイルダー)

 ビリー・ワイルダー監督の初カラー映画なのだそうです。日本で公開されたのは1953年。映画の黄金時代、1950年代にふさわしい華やかさがありますが、ビリー・ワイルダー監督ですから皮肉のきいた、小粋なユーモア感覚が今の時代にはない、のどかさであります。

 思い返してみるとビリー・ワイルダー監督ものには身分の差を題材にしたものがあって『ローマの休日』『麗しのサブリナ』などあります。

この映画のヒロインはジョーン・フォンテーンでクラシカルな美女ですし、主役はビング・クロスビーですからこの2人が恋仲になって最後、結ばれるというのはもう、配役を見るだけでわかる、この安心感。

(それを裏切ったからこそ、名作誉れだかいのが『ローマの休日』)

この映画では、オーストリアが舞台となって、そこに蓄音機を売りにきたアメリカ人セールスマン、ビング・クロスビー。

重要な役者といえば、もう、これは犬、であります。犬をめぐるどたばた騒ぎでもありますね。

 皇帝ヨーゼフ一世が、望むのは愛犬に子犬が産まれることで、壮大なロケ、セット、衣装の割には、子犬、子犬と騒いでいるのが可笑しい。

『エビータ』の主役、マドンナは絶対に主役は渡さないから!と力こぶを作っているような気合いは最初からなく、なんとものどかで、楽しげなかわいらしさがあります。

 ジョーン・フォンテーンは侯爵未亡人。

皇帝の愛犬のお相手として、飼い犬の黒のプードル、シェヘラザードが選ばれたとなると実は困窮している侯爵一家にはとんでもない富が転がり込んでくるわけです。

なんとかして、皇帝の飼い犬の子犬を産んでほしい、と願うところへ、犬を連れたアメリカ人セールスマン、ビング・クロスビー(役名が「スミス」だけというのも妙に可笑しい)美しい未亡人、ジョーン・フォンテーンとビング・クロスビーは犬を通じて恋仲になりますが・・・・・身分が全然違う。

 身分が違うからといって、悩みぬきますか、というと結構、けろりとして「あきらめましたわ」みたいな公爵夫人がいいですし、迫りに迫ってくるビング・クロスビーの押しの強さもけろりとしています。

実に他愛なくけろりとしているのであった。

 なんと言っても、犬が本当に一体どうやって言うことを聞かせたのか、と思うくらい犬に表情があって、名優であります。

ビング・クロスビーの犬が、耳がたれていて、はい、蓄音機ってこんな感じです、というと「ビクターの犬」のポーズをとってみせるあたり、本当に犬に感心してしまいました。

ハリウッドラブコメディの王道は、最初はウマが合わなくてけんかをしていた男女が色々あって恋仲になってめでたしめでたし・・・だとしたら、もう、この映画、犬たちが二重にやっている訳でそのアイディアに感心してしまう。

 ビング・クロスビーはもちろん歌も歌いますが、日本で今、人気のある若さや女の子のようなきれいな顔はしていないのです。

未熟さのない、恋の熟練者という感じで、うぶな公爵夫人なんかころりと、という説得力があります。そんな時代の違いも興味深い。

映画黄金期の良さが一杯つまった映画で、幸福感に満ちた映画です。

一番、幸福感いっぱいなのは、子犬を抱いた皇帝だったりする。そんなところもかわいらしくていいです。

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