英国王のスピーチ

英国王のスピーチ

THE KING'S SPEECH

2013年11月27日 DVD

(2010年:イギリス=オーストラリア:118分:監督 トム・フーパー)

 しみじみと良い映画。本当にこういう映画がわたしは好きです。

主役はコリン・ファースとジェフリー・ラッシュという男性2人なので、きれいきれいな眼福としての映画ではありません。

しかし、そこに描かれているもの、そして美しい撮影、洗練された脚本、これみよがしがないキャスティング、もうパーフェクトと

言ってもいい映画です。ああ、映画館で観たかった。DVDでもこんなに感激するのだから、さぞかし映画館で観ていれば・・・・

 これは実話だそうです。英国王室の恥とも言える部分をまっすぐに描いています。

1930年代。もう、第二次世界大戦に突入しようかというとき、英国では国王、ジョージ5世が高齢のため、息子たちに公務をまかせることが多くなりました。

 長男であり、次期国王であるエドワード8世(ガイ・ピアース)は、どうもいいかげんな遊び人で国王の器ではない。

次男、ジョージ6世(コリン・ファース)は、誠実、真面目、公務をなんとか果たそうという責任感がある人なのです。

しかし、ジョージ6世は子供のころから吃音症で、人前でスピーチをする、人前で話しをすることがとても苦手なのです。

映画の冒頭、万国博覧会の閉会の辞を読む、ジョージ6世はほとんどききとれないようなひどいしゃべりかたで周りだけでなく国民も失望する。

たかが、スピーチで・・・と言うけれど、人によっては楽々と難なくこなせる事が、ジョージ6世にはできない。

誰にでも、苦手ってあると思うのですが、王室の人間として人前で堂々とした説得力ある演説ができない、というのは致命的です。

いわばそれが仕事なのだから。宿命といってもいいかもしれません。

 もちろん国内から色々な医者や療法士を呼びますが治らない。

そこで、オーストラリアからの移民で、街中で開業医をしているライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)にたどりつく。

ライオネルは、ただ「方法」を教えるより、まず、平等な立場にお互い立つことを提案しますが、相手は王室。

そう簡単にはいきません。

 しかし、ライオネルの身体全身を使ったリラックス法、または、深層心理から吃音の理由を探そうとします。

真面目なだけでなく、かなりの癇癪もちであるジョージ6世とライオネル・ローグの戦いから友情へ・・そして信頼へと葛藤が続きます。

王室に生れたがゆえに、様々な抑圧を受けて育ったジョージ6世。兄のエドワード8世のようにいいかげん、楽天的になれればいいのでしょうが・・・バカ殿でも困るし、兄はさっさと王位を弟にゆずり、時はドイツのとの戦争に突入。

台頭してきたドイツのヒトラーは逆に演説の名人でした。その映像を見てショックを受けるジョージ6世。

 ジョージ6世を演じたコリン・ファースが、言葉が上手くでないときにみせる焦りと怒りと哀しみの表情といつでも穏やかで何があっても「許し」の表情を見せるジェフリー・ラッシュ、熱演。見所あるなぁ、ほんとに。

そして、イギリスとドイツは戦争に・・・国民のためにラジオで演説をしなければなりませんが・・・

とんとん拍子に上手くしゃべれるようになった訳ではなく、吃音というのはそう簡単には治らず、上手くいかないところは最後まで上手くいかないのです。

しかし、まるで機械のようにしゃべるよりも、人間味あふれるしゃべり方とはどういうことか?それをこの映画は教えてくれます。

 撮影がとても落ち着いた色合いで、逆光を多く取り入れた撮影とてもきれい。綺麗な美人だけを眼福にするよりもわたしは、ジョージ6世とローグが散歩する逆光の道の美しさにため息。アイディアも秀逸だし、映画も落ち着いている。

わたしも、普通の人が簡単に出来ることができない。それが負い目になったり、いらだちになったりする。

そんな時に観た、一本の映画でこんなに救われるとは。映画はやはりただの娯楽ではないと実感。

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更夜飯店

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