ワンダーランド駅で

ワンダーランド駅で

NEXT STOP WONDERLAND

2013年12月8日 DVD

(1998年:アメリカ:96分:監督、脚本、編集 ブラッド・アンダーソン)

 恋愛映画の基本といえば、もう、Boy meets girlであり、ハリウッド映画では、最初はけんかしたり、合わなかった2人が色々あってめでたく結ばれる・・・かなぁ、と安直に考えるわけですが、この映画は確かに恋愛をメインにした映画なのですがもう、最後の最後まで出逢わないのね。

 女性はボストンの病院で看護士をしているエリン(ホープ・デイヴィス)

冒頭は、同棲中の恋人(これがフィリップ・シーモア・ホフマンだったりする)が、価値観が違うと家を出て行ってしまうところから始まります。

金髪で美人といえば美人なんですが、すごく固くて頑固そうで、気むずかしい感じがするエリン。

 男性は、35歳になって大学に入り直し、海洋生物学者をめざして勉強中のアラン(アラン・ゲルファルト)

親が借金をしたり、学生になって学者をめざすにはもう年で、水族館でボランティアをしながら勉強を続けている真面目一本の青年。

 最初で、あ。この2人が・・・ってわかるのですが、女、エリン側のあれこれと男、アラン側のあれこれが同時進行していつになったら出逢うのだろう?と観ていて不安になるくらいな距離の置き方がこの映画の良さです。

 特にエリンは、タレント・エージェントをしているらしい母親の勝手な行動で、新聞の恋人募集欄に載ってしまい自称「美人でセクシーで、明るくて、知的で・・・」とアホらしい宣伝をされて、興味半分の男が群がってしまいうんざり。

あのね、自分で自分の事を美人だとか、セクシーだとか、知的だとか、宣伝広告に載せるなんてエリンからしたら信じられないのですが母親は呑気ですね。親の欲目だなぁ。迷惑な話だよね。

 さてこの映画ではめずらしく電車がよく出てきます。エリンとアランの共通点は同じ電車で会社に通勤している、ということです。

水族館駅があって、空港駅があって・・・・そして次がワンダーランド駅って、うそのようだが本当なのね。

水族館の利権をめぐってアランは、人気のハリセンボン、パフを殺せ・・・と命令されてしまいますが、このパフがかわいいのねぇ。

 もう、セクシーさとか、外見しか求めない興味半分の男にうんざり、というエリンのしらじらしい顔がよかったですね。

反面、誠実なアランは強く人にあれこれ言えず、流され気味。

電車が混み合う中での毎日の通勤のうんざりさ、というものも日本の映画でもっと描けばいいのにと思うことを描いてくれました。

エレンは1人でいることに対して、孤独は寂しくない、と言いますが、ひとりでいる時間もつまらなそう。

何に満たされるのか・・・男は女に、女は男に何を求めるのか・・・を出逢うまでの平行線でもってよく描いていて、バックに流れるボサノヴァのけだるい歌声が時にむなしく、時に優しく響く。

 もう、10代とか、若い人の恋愛の行方なんてわたしゃ、どうでもいい、と思う事が多くなっているのですが、この映画の恋愛は実に地味といえば地味でありながら、誠実で、人間観察に優れていますよね。

タイトルも粋で、個人的にはとても好きな恋愛映画で、わがココロの映画の一本。

いや、わたしはハリセンボン(英語でBaloonfishという)のパフのぬいぐるみが欲しいです。可愛いなぁ。

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