ざくろの色

ざくろの色

The Color of Pomegranates

2013年12月14日 ビデオ

(1971年:ソビエト:73分:監督 セルゲイ・パラジャーノフ)

 映画には色々な可能性があって、見方も色々あっていいと思うのです。

20代の時に出会って、そして大好きになって、今、50代になったのに相変わらずわたしはセルゲイ・パラジャーノフ監督の映画にため息をついてしまう。

自分は何故、映画を観るのか、ということをつくづく考える一本があった方がいいと思うわけですね。

 ハンサムな男優の「いい男鑑賞」でも、白人美人やファンであるアイドルの女の子を堪能する「眼福」でもいいわけですよ。

一時の現実逃避でも、娯楽でも、目的はデートであってもいいわけですよ。

自称、インテリが難解な映画に自分の解釈をつけてひとりよがってもそれはそれでかまわないですよ。

話題だからとか、ヒット作だからとか、「おもしろそう」が映画を観る動機であってもいいわけですよ。

例えば、一観客でなくて、映画の世界にたずさわった人が、作る側からの思い入れであってもいいわけですよ。

映画の世界を目指す若い人が勉強の為に観てもいいわけですよ。

人気原作の世界をそのまま楽しみたい、または、原作への思い入れから映画を最初から違う違うと首を振りに行くつもりで行ってもいいわけですよ。

 でもね、セルゲイ・パラジャーノフ監督の映画だけは、上記の理由、動機、全く違う世界なんです、わたしにとっては。

何故、自分は映画を観るのか。映画ってそもそも何なの?自分にとって?と1人で考える世界が広がるのが、わたしのパラジャーノフ監督の映画の見方です。

 18世紀のアルメニアの詩人、サヤト・ノヴァの幼少期から死ぬまでを、物語でなく映像美でもって貫き、構図、色使い・・・

つくづく好きなんですね、この構図と色使い。今は技術が進んで、凝った撮影や特撮はできるけれど、この映画は時代的にもソビエト連邦だったという背景で、やりたいこと、できることは本当に限られていたと思うのです。

それなのに色あせない、この鮮やかな映像魔術。

 そのときの体調や精神状態で映画だけでなく、周りの風景がくすんでしまったりすることがある。

思い出すのも鬱陶しい、俗っぽいことばかり・・・そんなときにこの様式美と儀式美に貫かれた映画を観ると浄化されちゃうわけです。

タイトルがざくろの色ですから、この映画のキーカラーは赤です。

もう、赤の氾濫ね。ざくろの色、赤。血の色、赤。そして恋の色、赤。生きているものが持っている色、赤。

宗教や民族的に色の持つ意味合いがあるのだろうけれど、わたしはあまりわからない世界なのです。

しかし、そんなこと、知らなくても、観ていて「赤」に目を奪われ、そして白、黒、青、金色・・・と赤と融合する、時に相反する色がめくるめくように出てくるのを、色のシャワーあびているように観ていているだけで、わたしはそれでいいのです。

 分析する気なんてなくなるし、批評する気にもならない、ただひたすら瞳の快楽に沈む映画・・・それがわたしが映画に求めるものなのかもしれません。

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