利休にたずねよ
2013年12月15日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて
(2013年:日本:123分:監督 田中光敏)
山本兼一の直木賞受賞作『利休にたずねよ』の映画化。
利休に市川海老蔵、後に対立することになる豊臣秀吉に大森南朋。利休の妻、宗恩に中谷美紀。織田信長に伊勢谷友介。
原作では、各章が各人の胸のうちとなっていて、そのすれちがいを描いていました。
映画版では古田織部を大きく割愛してしまっています。
利休、切腹の朝から映画は始まり、そして時はさかのぼっていきます。
秀吉も利休も、青年期、中年期、壮年期と全然違う立場にのぼりつめたのが交互に描かれます。
茶道といえば、もうこれは所作。そういう意味では歌舞伎の世界の人を主役に持ってきたのは本格志向なのではないかと。
茶道では花も活けたりするので、そういうことはなかなかね、撮影の為に習いましたでは苦しいところ海老蔵さんはさすがの所作の美しさ。
反面、この物語で描かれているのは「高慢」という事です
秀吉は織田信長亡き後、天下人となり、利休は遊び人だった若い頃から、どんどん茶道へとつきすすみ茶聖とまで言われるほどになります。
茶道が武士の間で、当然のこととなるとその師範格である利休への尊敬は天下人である秀吉すら嫉妬するくらいです。
利休はきっぱりと言います。「美はわたくしが決めること。わたくしが選んだものが伝説となります。」
利休が認めたもの=美という構図ができあがってしまう。
撮影は京都を中心にされたそうですが、建物や緑などがこれは日本の映画でしょう、という日本の美を追います。
茶道について詳しい説明はないのですが、所作ひとつひとつが丁寧に映されていて、飾られる花のセンスもさすがのセンスで
茶花というのはシンプルであるがゆえに大変難しいのですが、シンプルを簡単と安直に考えてはいけないのが茶道、華道の世界なのです。
良かったのは、織田信長を演じた伊勢谷友介がきりり、としていて美というものに最初に貪欲だったのは信長だったのではないか、
と思わせる迫力がありました。
そして、秀吉を演じた大森南朋。最初は利休よりも身分が下で、泣きながら利休に訴えるところでは涙だけでなく鼻水までだらだら流しての熱演。そして笑う時のどこかむなしさの漂う笑いが良かったですね。
撮影大変美しく、熊井啓監督の映画のように美しい風景の中で、高慢という争いをする人間たち。
利休はだんだん表情を顔に出さなくなりますが、行動で高慢を見せるという難しい役所。そして最後には秀吉に頭を下げず、切腹を選ぶというその影には・・・という事もあります。
感心してしまったのはどんなにえらくなっても利休の足袋の裏が汚れている事でした。昔の家屋の生活で白い足袋を保ったままなんて殿様くらいでしょう。利休の足袋の裏の汚れ・・・これリアルで良かったですよ。
更夜飯店
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