シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版

シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版

Les parapluies de Cherbourg

2013年12月16日 DVD

(1964年:フランス:91分:監督 ジャック・ドゥミ)

 名作と言われている有名な映画であり、音楽は今もBGMなどでよく耳にする名曲。作曲はミシェル・ルグランです。

ジャック・ドゥミ監督といえば、この映画と『ロシュフォールの恋人たち』が有名ですが、実はドゥミ監督は他はあまり知られていません。

全編が歌という形は『エビータ』などがありますが、この映画がおしゃれなのは、「歌っています!」という部分とさりげない会話・・・「奥さん、お手紙です」という郵便屋さんとか、仕事のあと、どこに行く?「俺は劇場へ」「映画だな」「踊りにいくさ」といった普通の会話が歌というより、メロディにのせてハミングしているようなおしゃれ感があることですね。

 また、冒頭の雨の中を色様々な傘が通るのを上から撮るように、パステル調を基調とした独特の色使いがセンスいいのです。

目にやさしいパステル色の組み合わせ・・・現実にはこんな家はないけれど、実にお話としてきれいに収まっているんですね。

そして、若かりし頃のカトリーヌ・ドヌーブの無敵の美しさ。

 なんかこう書くとおしゃれ一辺倒のようですが、実はこの映画ね、結構、シビアなところはシビアなんですね。

16歳のジュヌビエーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)と車の整備工場で働く20歳の青年、ギィは恋人同士。

しかし、ギィは兵役にとられ、アルジェリアへ・・・子供もできたのに待ちきれなくなったジュヌビエーヌは金持の宝石商と結婚してしまう。

そして、やっとギィが戻ってきたころには・・・という別れの物語なのです。

 ジュヌビエーヌは未亡人である母と2人でシェルブールの街で傘屋をしています。

ギィは高齢の伯母さんと2人暮らし。体調が良くない伯母さんの看病は同じアパートに住む女の子、マドレーヌ(エレン・ファルナー)がしている。

第一章から第三章まで成りますが、第一章はジュヌビエーヌとギィの恋人同士が中心で、まだ若すぎるし、相手が車の整備工では・・・

と苦言を呈する母なんて相手にしないでギィに夢中なジュヌビエーヌ。

伯母さんを大事にしているけれど、看護をするマドレーヌには挨拶程度でもうジュヌビエーヌに夢中なギィ。

 第二章で兵役に行ってしまった恋人、ギィを待つ、しかも子供まで身ごもってしまって、店は税金を払わなければつぶれてしまうという危機に。ここでジュヌビエーヌがママに「宝石を売れば?」と言うともう店が危ないって時なのに「宝石を身につけないなんて裸と同じ」と

言い切るママ。このママがキーパーソンね。

 娘としては今、こんな状態なのに・・・ってぶすっとしてしまうけれど、ひらひらした金魚みたいなママは、こうなったら娘が金持と結婚して自分もいい暮らしを手に入れる!と画策する訳です。

ここら辺で、この自分をべったり押しつけてくるくせに「あなたのためよ」と言いつのるママが鬱陶しいなぁ~と思いますね。

しかし、連絡がとれない不安から、産まれてくる子どもも一緒にと言いつのる宝石商のプロポーズを受けるジュヌビエーヌ。

ここからカトリーヌ・ドヌーブがイキイキと恋に浮き沈みしている若い女の子から、ただのきれいなお人形みたいになってしまう。

美しいドレスに身を包んでも無表情の綺麗なお人形さん。

 そして第三章、兵役を終えて戻ってきたギィを待っていたのは、もう死直前の伯母だけだったのです。

荒れてしまうのをずっと見つめるマドレーヌ。2人目のキーパーソンはマドレーヌね。

ジュヌビエーヌは去ってしまった、伯母も死んでしまい1人きりになって初めてマドレーヌの存在に気がつくギィ。

そこで、マドレーヌはどうしたか?というときっぱりと理路整然とただの一時的な寂しさから、自分を求めるのはやめて、と言い切るのです。

マドレーヌは前半はとにかく地味で髪型も野暮ったい。ジュヌビエーヌのような華やかさは一切ない。但し、賢かったのです。

 お人形さんになってしまったジュヌビエーヌと、耐える時は耐え、自分の力で活路を作り、美しく変身するマドレーヌ。

今の時代に観るとこの映画はとてもきれいな映画ではあるのですが、なんかねぇ、自力で美しくなるマドレーヌの方が安心しますね。

なんかジュヌビエーヌは確かに美しい女の子ではあるのですが、ただ、若くてきれい、それだけ、のような気がして。

シアワセなんて誰が決めるものではなく、映画はそういう事を断定はしません。若い時に観たら感想は違うのかもしれないけれど、

お人形さん状態になってからのジュヌビエーヌというのは映画に出てきませんからね。あくまでもシェルブールという街から映画は出ない。だから街から出て行ってしまってパリで金持と暮らすジュヌビエーヌは描かないのです。

 

 歌だけではなく、衣装も部屋のインテリアもパステル調で統一されていて、それはそれは美しい色使いなのですが、第一章だけだったら甘い恋物語でしょうが、色もだんだん落ち着いた色になっていく。

華やかな生活もいいし、堅実な生活もいい。どちらを選ぶかは人それぞれであって構わないのですが、この映画の良い所は、きれいの中にも落とし穴がある、ということをさらり、と描いていることだと思います。

0コメント

  • 1000 / 1000

更夜飯店

過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。