ブラック・スワン
Black Swan
2013年12月17日 DVD
(2010年:アメリカ:108分:監督 ダーレン・スワロノフスキー)
この映画は、完全に好き嫌い別れると思うのですが、きれいなバレエ映画と勘違いしてしまうととてつもなく気持ち悪いし、後味悪いかも。
しかし、心理サスペンス映画としては(またはもう、ホラー映画)すごく迫力があって、わたしは好きです。きっぱり。
観る者を圧倒させるだけの力はあると思います。
主演のナタリー・ポートマンがアカデミー賞の主演女優賞とった事が一番の話題かもしれないのですが、確かにね、もう、ナタリー・ポートマン、ここまでやりますか?というくらい「やってしまう」のです。
この時、別の場所では・・がない映画で、映画はずっとナタリー・ポートマンを追い続けるしね。役者根性たっぷり見られます。もう、こわいわ。
ニューヨークのバレエ団。新作は斬新な振り付けで古典『白鳥の湖』をやることになり、
見事、主役に選ばれたニナ(ナタリー・ポートマン)
しかし、ニナの周りは不安に満ちています。白鳥の湖は白鳥と黒鳥を一人二役やらなければならない。
バレエの技術は、認められるものの、清純な白鳥はともかく、正反対の男をだます悪女である黒鳥の演技ができない、真面目一本のバレリーナ。
もとバレリーナだった母と2人暮らしで、母の監督の元、バレエ一本でやってきたニナには、「男をたぶらかす」とか「官能的」とはほど遠い性格なのです。演出家からは「不感症の白鳥」と言い切られてしまう。
しかも、母の過剰な期待や、周りからのプレッシャーで自分を追い詰めすぎていることが、何かあるとすぐ吐く、
そして無意識のうちに自分の身体をかきむしる自傷という行為になってしまっています。
しかし、何としても主役をやりたい、と自分に言い聞かせ、無理ばかりしていて映画冒頭から、追い詰められているニナ。
もう、ずっとニナは追い詰められっぱなしで、ライバルで、自由奔放なリリーというバレリーナの出現、演出家の気まぐれと厳しい稽古。母の過剰な期待。要求されるばかりで、自分の要求がない・・・誰かに相談するという友人もいない。
本当に孤独な、自分だったら耐えられないような環境の元で必死にバレエを踊る、ナタリー・ポートマンの目がこわい。
この映画で、重要なアイテムが鏡。バレエのレッスン場は鏡張りで、家も練習用に鏡がたくさんある。楽屋はもちろん鏡だらけ。
どんどん精神的に追い詰められるニナは、その鏡に映る自分をしっかりと見ないといけないのにそこに幻影を見るようになる。
そのシーンが、ぱっと一瞬怖い映像が現れて消えるのね。そのタイミングが見事で、怖いながらも目がそらせないのです。
特撮でですが、どんどん自分の肌をかきむしっていく肌の傷がすごく痛々しいし、指の爪をはさみで切る時のはさみがまた、こわいよう。
ナタリー・ポートマンは子供の頃、バレエをやっていて、この映画の為にバレエレッスンを一年近くして撮影にのぞんだそうですが、本格的にバレエをやっている人からしたら、ちゃんちゃらおかしく見えるかもしれないし、実際、そういう論議が起きたそうです。
しかし、わたしは、精神的に追い詰められていくニナの顔とか微妙に不安を隠す一瞬のつらそうな表情とか、すごいと思って観てました。
医者と話していたときに、医療ものの映画やドラマを見るとつい「間違いさがしをしてしまう」と言っていたのですが、そんな間違い探しをする余裕を与えないよね。大きな嘘を一つつくためには、たくさんのリアリティが必要。
それが、手持ちカメラでナタリー・ポートマンを追うカメラだったりする訳です。踊っている中にどんどんカメラが入っていく。
舞台監督や偉い人の性的なことも含めたお気に入りで主役をとったのではなく、実力で主役を取った、という事実とそれだけでは、優等生なだけで、黒鳥は踊れないというジレンマと。
まぁ、男の人で、ナタリー・ポートマンを語る時に、未だに13歳だった『レオン』を引き合いに出すと、潜在的なロリコン趣味がモロ出しになるのでやめましょう・・・それだけ『レオン』は、男性の美少女欲を刺激した映画だったって事でもありますが、
もう、ナタリー・ポートマンは結婚して子供までいるんですよ~気をつけましょうね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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