愛の奴隷
A Slave of Love раба Любви
2013年12月21日 DVD
(1976年:ソビエト:93分:監督 ニキータ・ミハルコフ)
タイトルになった『愛の奴隷』とは、この映画の中で人びとが観るサイレント映画のタイトル。
この映画は、今はなき三百人劇場での最後の「ソビエト映画の全貌」で、ミハルコフ監督の映画はすべて上映されたのに猛暑の夏、ばててしまって見逃していた一本です。
妙にココロにひっかかっていた映画、今回、観られてよかった、よかった。
時代は1918年ごろ。まだ映画はサイレント映画の時代。人びとは内容が同じようなメロドラマでも映画ならなんでもヒットしてしまう、
という時代です。
そこで人気女優のオルガが新作の映画の撮影をしている。モスクワから遠く離れたのどかな南部地方での撮影だけれども
もう、モスクワでは革命が起きており、軍による圧政がひかれようとしていて、共演役者の到着は遅れる、フィルムがなくなっても
新しいフィルムがなかなか手に入らない・・・中での映画撮影。
最初はのどかにほほえましく始まるし、映画はずっとその雰囲気を保っているのですが、だんだん忍び寄る革命の影。
反革命派だとわかるとその場で銃殺という空気がだんだんしのびよってくる。
最初はただのふわふわとした、何も考えていない人気女優のオルガがだんだん、撮影所に入り込んでくる革命の影とその怖さに
気がついていく映画。
映画の現場の人たちはあえて革命の事は話さないし、触れようともしないけれどきらきらと輝く映像の中に影を見せるところが
いくつかあるんですね。オルガはだんだんカメラマンの青年と仲良くなるけれど、散歩をしている間に強風が吹いて白いスカーフがどこまでも、どこまでも飛んでいってしまうのをカメラはずっと追い続けます。
映画監督が最初は、どんな人なのかわからないのですが、太っている事を気にして、密かに運動しようと人目のないところで木にぶら下がったりしてみたり、最後、軍の介入ギリギリでクランクアップしたときの「ロシアのこれから」を想う哀しい目。
映画は失敗だった・・と言うけれど、プロデューサーは映画ならなんでもいいのさ、ヒットするのさ・・・と慰める時のなんとも言えない、わかってるよ、とあきらめきった表情。
秀逸なのはラストシーンなのですが、遠くへ遠くへ列車が動いていく、列車が去り、カメラはそのまま線路を黙って映す。
こういう、「絵の中心となるべきもの」がフレームアウトしてもカメラは不動、という手法が多く用いられています。
どんなにひとりが革命に反対の声を上げても、それは空しく白い空へと消えていくのです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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