ガタカ

ガタカ

Gattaca

2013年12月22日 DVD

(1997年:アメリカ:106分:監督、脚本 アンドリュー・ニコル)

 1997年の映画で、今回、DVDで再見。

改めて美しい映像とマイケル・ナイマンの音楽に酔いしれる・・・けれども、この映画のまなざしは厳しい。

 近未来。遺伝子工学が発達して人間は人種ではなく、遺伝子でその寿命から病歴から性格までわかってしまう時代の物語。

自然分娩で産まれたヴィンセント(イーサン・ホーク)は、検査で寿命は30歳あまりだといきなり告げられます。

そして、遺伝子操作で良い遺伝子の組み合わせで、完璧な身体で産まれた弟。

 視力が悪い子供、身体が弱い子供・・・そんなヴィンセントは宇宙に憧れる。

しかし、宇宙飛行士になるには「優秀な遺伝子」を持っていることが条件で、どんなに知能的に優れていてもヴィンセントには無理なのです。

ヴィンセントは清掃員をしていますが、宇宙機構、ガタカの建物に入った時に、ここに入りたいと熱望する。

そして、闇のエージェントから「DNAを買う」

今は下半身不随となってしまった、最高のDNAを持つジェローム(ジュード・ロウ)は元、水泳選手。

指紋、血液、尿・・・すべてを買取り、ジェロームとして見事、ガタカに入り、土星への宇宙飛行士に抜擢。

 DNA操作の怖さは、学校で勉強するより、この映画一本観ればいいと思います。

この場合、宇宙飛行士ですが、優秀とは何なのか、という事を問うています。

確かに、知力が優れていることも必要ですが、肝心なのは健康な身体なのです。

自分の持って産まれたDNAを捨てるということは、神に近づきたい人間と同じのように思えます。

 この映画には完璧な人間は出てきません。

生れつき悪い遺伝子しか持っていないヴィンセント。DNAは優秀なのに自らその優秀さを捨てたジェローム。

どちらも美しく、そして哀しいのです。

 この映画は近未来の宇宙ものですが、なんといっても感心してしまうのは、宇宙ものだから特撮に凝るのではなく、

宇宙へ行く人びとはスーツ姿で飛行船に乗る。今のイメージとしての宇宙飛行士を完全になくしてしまっているのに

説得力ある美しい美術で固めているところですね。

 ガタカの中で殺人が起きて、ヴィンセントは睫毛を落としてしまい拾われる。

それは、かつて清掃員としてガタカの中に入った時のものと一致し、殺人容疑者の疑いをかけられる。

しかし、ヴィンセントはジェロームとしてガタカにいる。警察の検査・・・尿、血液までは「借りられる」から大丈夫なのですが

髪の毛や唾液はどうにもならない。髪の毛一本、落とさないように気を遣っているヴィンセント。

しかし、睫毛とは・・・

 潔癖さを強いられる苦しい生活にも、なんとしても宇宙飛行士になりたいと必死になるヴィンセントを演じたイーサン・ホーク、

優秀ながら、持つ者の苦しみを体現しているジェロームを演じたジュード・ロウ。

どちらも美しく、そして哀しく、観る者に余韻を残します。

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