迷子

迷子

不見/The Missing

2013年12月28日 DVD

(2003年:台湾:88分:監督 リー・カンション)

 2007年の東京フィルメックスで、リー・カンション監督の第2作目『ヘルプ・ミー・エロス』を観て、その映像美にとても驚いた覚えがあります。

リー・カンション監督は俳優であり、この映画の製作をしているツァイ・ミンリャン監督の映画、すべてに主演しています。

普通、俳優(や他のジャンルの人)が映画を撮ると失敗する、映画が好きなだけでは映画は撮れないと思うのですが、リー・カンションは俳優としてもいいし、監督としてもその映像美は誰にも真似できない世界を持っています。

 この映画はそんなリー・カンション監督の初監督作品。

『ヘルプ・ミー・エロス』と違って性的なものは出てこないし、ストーリーはシンプルで公園で3歳の孫を遊ばせていた

祖母がトイレに入って出てきたら、孫の姿が見えない。

 あわてて、あちこちを探し回る祖母の姿を追います。

同時に、一日中インターネットカフェでゲームをしている少年が出てきます。

公園に頼んで呼び出してもらっても、警察に相談しても全然、行方がわからない孫。

祖母といっても、まだまだ若く、走り回る元気さがありますが、カメラは固定で長回しでそのかけずり回る祖母の姿を追います。

 同時に夜になって、家に帰ってもちょっと認知症気味の祖父がいないことに気がついた少年がやっと祖父を捜し回るようになる。

孫を探す祖母。祖父を探す孫。

親切な人もいて、特に、バイクに急にのりこんで一緒に探してよと祖母である女性が強引に言うと最初は「???困る」と言っていた太った青年がずっとつきそってくれたり・・・

 実はこの映画、認知症ということが裏に潜んでいるのだと思う。

祖母は色々な人に孫を見なかったか、と聞くので当然ながら、どんな服装をしていたの?と聞かれると「オレンジ」としか言えず帽子は被っていた?と聞かれると「わからない・・・・」と言う。

もともと孫なんていなかったのではないか?とすら思うくらい心もとないけれど、必死になっていく祖母。

夜もふけた人気のない公園で、孫を、祖父を探し回る2人はつかれきってしまう。

 何が面白いの?と言われてしまうと答えに困る映画なのですが、映像はとてもクリアできれい。

安定したカメラはじっくりと右へ左へと走り回る祖母を追う。物語は寡黙だけれど、映像は多弁である、というのが

リー・カンション監督の映像美で、その原点とも言える映画。

なにげないシーン(トイレのシーンがとても多い)にこだわりがあり、インターネットカフェの青い光の下に集まる人びとの寡黙さも怖い。

テレビではSARSのニュースをしきりにやっている。

この映画はずっと不安の予感をひっぱっていて、多くを語らないけれど、その裏に孤独や不安を隠し持っているように思います。

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