パパってなに?
Vor/The Theief
2014年1月1日 DVD
(1997年:ロシア=フランス:97分:監督、脚本 パーヴェル・チュフライ)
これは、ある少年の回想の映画です。
子どもが産まれる前に夫を亡くし、若くして未亡人となってしまった母、カーチャと共にあてどなく列車に乗り込んだ6歳の少年、サーシャ。
そこで、カーチャは逞しい軍人のトーリャ(ウラジミール・マシコフ)と出会い、すぐに激しい恋に。
トーリャについて行くカーチャと息子のサーシャ。
まだまだ、幼いサーシャには、産まれる前に亡くなってしまった父というものが、実感としてよくわからない。
そこへ、他人とはいえ、急に現れた「父」トーリャ。
トーリャは、サーシャに「やられたらやりかえせ」と生き抜いていく術を教えます。
しかし、素直にパパと呼べない、サーシャ。
3人は家族となり幸せに暮らしました・・・にはならず、トーリャは逞しく、頼もしい大人の男だけではありませんでした。
それでも、カーチャは別れる事ができず、戸惑いながらも、トーリャについていく母と息子。
語り手は大人になったサーシャのはずですが、大人になったサーシャはどうしているのか、どんな大人になったのか、そこを
この映画では説明しません。
秋から始まって、厳しい冬になるまで、サーシャの「父」だったトーリャ。
結果としては厳しいものかもしれませんが、一時的にでも父として息子に何かが伝わったのがわかる、たとえそれが他人だとしても。
そして信じていたもの、信じたいものが、だんだんとくずれていく様子を丁寧に映画は追っていきます。
幼いサーシャは、トーリャに向かって「パパ」と叫ぶ。しかし、その時はもう遅い。
不安定な3人をカメラはずっと追っていきます。
父として、必要なものは何か?この映画のサーシャは、考え続けます。
トーリャは、いじめっ子に囲まれてやられっぱなしだったサーシャを鍛えます。殺気を出せば、相手は屈すると。
そうしないと生きていけないのだ、と。
妻として、幸せだったのはつかの間だったのかもしれない母のカーチャに比べ、幼いサーシャはまるで、子猫のように目を丸くして
物事を見る。そして、だんだん成長していく。
決してただの後味の悪い映画にはなっていないのは、なにはともあれ、トーリャはサーシャに「父から息子へ」をしっかりと
教えたのがわかるからです。
最後に、雪の中を転びそうになりながら「パパ!」と叫ぶ、サーシャの姿はだんだん遠くなる。
その姿に、今はどうしているかわからないサーシャの大人になった影を見るようです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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