大人は判ってくれない

大人は判ってくれない

Les Quantre Cents Coups

2014年1月1日 DVD

(1959年:フランス:99分:監督 フランソワ・トリュフォー)

 わたしが初めてサインをもらった映画監督はフランソワ・トリュフォー監督です。

高校生の時、名画座でトリュフォー監督の映画が大好きになって、当時、主演も兼ねた『緑色の部屋』が公開中で来日、神保町の三省堂書店でのサイン会に行ったのです。サイン会というものに行ったのは、この一度きり。

学校が終わって行ったら、もう、すごい行列で整理券をもらわないといけない、という。

どこでもらえますか?と聞いたら、はい、これ。と券を渡してくれたのが「2番」

いまだに、何故、2番という番号をいきなりくれたのかわかりません。考えてみれば周りで学校の制服を着ているのはわたしだけだった。

 『子どもたちの時間』という『トリュフォーの思春期』のノベライズ本にサインをしてもらって、握手をしたのですが、

わたしはフランス語が話せず、ただ黙って握手してもらったことが残念でなりません。英語でいいから何か話しかけたかったのだが。

トリュフォー監督は、茶色い暖かい瞳をよく覚えていて、握手した時の意外と小さい手をよく覚えています。

感激したわたしは、その後ずっと部屋に『緑色の部屋』のポスターをはっていました。

 トリュフォー監督は恋愛映画にこだわって、戦争も政治も描きたくないから恋愛映画を撮る、と話していましたし、

監督になる前は、非常に攻撃的で辛口な映画評論家でもありました。

子ども時代をベースにした、この初長編映画『大人は判ってくれない』は、見逃していてやっと観る事ができました。

 この映画でオーディションで主役のアントワーヌ少年役をやったのが、ジャン=ピエール・レオ。

当時、まだ14歳ながら不敵な目つきをした、男の子です。

学校では勉強ができず、厳しい先生から目をつけられている、両親は子どもへの感心が薄い。

学校をさぼったり、盗みをしたり、家出を繰り返し、反抗的でとうとう少年鑑別所に入れられてしまう。

 13歳、14歳という年齢は思春期で、誰でも通過するものかもしれませんが、それはあまりいい思い出ではありません。

無性に腹が立つし、親や兄弟には反感しか抱かないし、学校も楽しくはなかった。

それなりに、友人がいたり、笑ったりはしたのだろうけれど、あの時期に戻りたいとは思わない。

 等身大の思春期の子どもたちを描く映画はそれまであまりなかったそうで、今は、それなりにあるのかもしれませんが、

この映画のシンプルさと奥深さとやはり少年たちのいたずらの数々は、言葉で現すよりも映像を見てもらったほうがいいかもしれません。

アントワーヌを演じたジャン=ピエール・レオは、どんなに厳しくされても泣かないのが、鑑別所に送られる時だけ顔に光が

当たった瞬間だけ、涙を流す。一瞬の涙がこんなに切ない映画もないです。

わんわん、泣くばかりではなく、一瞬の街の光に光る涙。

 そしてこの映画のラストシーンの秀逸さ。これから、アントワーヌはどうなってしまうのだろう、観る者の胸をしめつける。

この映画でトリュフォー監督はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。ヌーベルバーグの第一人者となる訳ですが、わたしのなかでは、トリュフォー監督はヌーベルバーグの監督ではなく、フランソワ・トリュフォーという一人の映画監督です。

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