セラフィーヌの庭

セラフィーヌの庭

Seraphine

2014年1月3日 DVD

(2008年:フランス=ベルギー=ドイツ:126分:監督 マルタン・プロヴォスト)

 代表的な画家はアンリ・ルソーの素朴派、と一般に言われる中で、セラフィーヌ・ルイという人がいました。

セラフィーヌ・ルイの生涯は、本で読んでその独特な植物を描いた絵など大変強烈でしたし、未婚のまま、ずっと昼はメイドをして夜は絵を描く・・・絵の勉強をした訳でもないのに41歳の時、神の啓示を受けて、絵を描き出した、という異色の画家です。

1942年、精神病院で亡くなった後、画商ウーデにより世界に紹介されたセラフィーヌ。

 この映画は、セラフィーヌとその画才を見抜く画商であり、美術評論家のウーデの出会いから始まります。

もう40代なのに未婚で、いつも黒い服を着て、家つきメイドというより、色々な家の雑用を黙々とこなすだけのセラフィーヌ。

貧しくて、ろくな画材も買えないから、色々な工夫をして絵の具を作ったりします。

狂信的とも言える信仰心があって、近づきがたい変わった人と見なされています。

 しかし、ウーデが引っ越してきた家の掃除をまかされたのをきっかけに、ウーデはセラフィーヌの絵を知ります。

アンリ・ルソーを見出した画家、ウーデ。

しかし、第一次世界大戦が始まり、ドイツ人であるウーデはフランスから去らなければなりませんでした。

そして、戦後、またフランスを訪れたウーデは、ボロボロになりながらも絵を描き続けるセラフィーヌと再会します。

 セラフィーヌを演じたヨランド・モローが太ってよたよたと歩く様から、ごつごつした手、爪の中が真っ黒な指・・・

絵を描くときの熱心を通り越した何かにとりつかれたような表情が迫力です。

ウーデに認められたことで、とんとん拍子にハッピーになりましたか、というとセラフィーヌは金が入ると無駄な浪費をしてしまう。

さらに世界大恐慌・・・そして第二次世界大戦と世の中は厳しくなっていく。セラフィーヌは精神に異常をきたす。

 撮影が緑をふんだんに映して、スクリーンは緑の氾濫のような美しさ。

変人と陰口を言われながらも、絵を描き続けて、認められると無駄な浪費・・・というセラフィーヌがずっと哀しい。

なにかが、セラフィーヌの中で壊れてしまっているような感じを受けます。

日本ではあまりセラフィーヌ・ルイの絵は有名ではないのですが、その絵は一度見たら忘れられない強烈な生命力を持っています。

恋愛も若い人も出てこない映画だけれど、哀しいけれど、頑ななまで絵に固執した一人の画家の映画としてとてもよくできています。 

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