わたしを離さないで

わたしを離さないで

Never Let Me Go

2014年1月4日 DVD

(2010年:イギリス=アメリカ:105分:監督 マーク・ロマネク)

 原作はカズオ・イシグロの同名小説です。この映画のエグゼプティプ・プロデューサーもしていて、原作の雰囲気を損なわない

そんな映画になっていました。

ということは、静かで、声高ではなく、上品で、落ち着いている、寂しげな映画なのです。

娯楽を期待する人向けではないなかな、と思います。

 原作では、イギリスのヘルシャムという寄宿学校の子どもたちの未来は、最後まであまり露骨にはっきりとは書かれていませんでした。

映画は、最初の方で、何故、ここが「特別」なのか、を明かしてしまっています。

落ち着いた色調で統一していて、ヘルシャムの子どもたちもくすんだ灰色の制服を着ています。

そして規律正しい生活、定期的な健康診断。

シャーロット・ランプリングが校長を演じているのですが、生徒の前で訓示をします。

「あなたたちは身も心も健康でなくてはなりません」

 子どもたちは名前はキャシー・H、トミー・Dなど姓はありません。孤児というより親がもともといない特別な子どもたちなのです。

子どもたちは、18歳までヘルシャム校にいられるけれど、その後の将来はありません。

そのことをもう、受け入れてしまっている子どもたち。

主人公はキャシー・H(キャリー・マリガン)。友人、ルース(キーラ・ナイトレイ)とトミー(アンドリュー・ガーフィールド)は

恋人同士となります。3人の仲良しでしたが、だんだん、孤立していくキャシー。

 20代になり、ヘルシャムを出た3人は共同生活をはじめます。といってもあくまでも施設の延長であり、

ずっと外に出ることは禁止されていた3人は、レストランに入ってもメニューを見て、ウェイトレスに注文する、ということができない。

学校の中では、外での暮らしの疑似練習をするのですが・・・大人になって外の世界に出るために生きているのではない3人。

 3人の若者を演じた役者さんが、それぞれに寂しげな目をしていて良かったですね。

特にキャシーを演じたキャリー・マリガンは、ずっと哀しげな目をしていて、黙って涙を流す、そんな姿がとてもはかない。

生物には命があっていつかは終わりになる。

この若者たちは、未来がないのです。SFといってもいい設定でもありますが、あくまでも映画、そして原作は静かに

生きている間に一体、何ができるのだろう、を問い続けています。

 静かに始まり、そして静かに終わる映画。派手さはなくてもきちんとした映画です。 

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更夜飯店

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