アーティスト

アーティスト

The Artist

2014年1月6日 DVD

(2011年:フランス:105分:監督 ミシェル・アザナヴィシス)

 なんと言ってもこの映画は芸達者です。

芸術家というのが原題ですけれども、芸が達者なんですね。

アイディアがまず、面白い。全編モノクロでスクリーンはスタンダードサイズ、しかもサイレント映画で、時々字幕が入るだけです。

フランス映画ですが、描いているのはサイレント映画からトーキー映画に変わる時期のアメリカ、ハリウッド。

 1919年。映画はサイレント映画真っ盛りで、大人気スターのジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)

冒頭、映画の中のサイレント映画でぴかぴかにダンディぶりを発揮しているジョージ。

そんな時、映画館から舞台挨拶を終えて出てきたジョージにつまずいてしまう、ジョージの大ファン、追っかけの女の子、ペピー(ベレニス・ベニョ)

ファンサービスで、そんなペピーにも優しくしてあげたら新聞に載ってしまう。

ペピーは女優を夢見ていて、オーディションに受かり、端役から始まってどんどん、人気女優となる。

 しかし、時代はサイレントからトーキーの時代へ。

トーキーを絶対認めないジョージは、過去のスターへと没落。

反面、トーキーの華として、どんどんスター街道を駆け上るペピー。

時代は、株価大暴落、そして映画はサイレントはなくなってしまう。

なんとかして、ジョージを救いたいペピーではありますが、立場は逆転してしまう。

 こう書くだけでは、この映画の良さが全然伝わらないですね。

なんと言っても、この映画はずっとサイレン映画を貫いていて、台詞は字幕だけ、なんです。しゃべる所は映ってもその言葉は聞こえない。

そして、要約したような字幕が合間にはさまれる。フランス映画で、ハリウッドを描く時にこの手法は粋ですね。

英語のネイティブスピーカーからしたら、どんなに英語が上手くてもそれは違う発音になってしまのですから。

 サイレントからトーキーに変わる時、映画ではなく、ジョージが何気なく置いたグラスが「かちゃん」とクリアな音を出す。

そんな描き方をしています。

わたしは、年代的にサイレントやトーキーの時代は過去で、あくまでも1970年代後半から映画を観るようになったけれど、

後にマキノ正博監督の昔のサイレント映画などを観て感心してしまうように「映画の心」は同じなんです。

しかし、観客は常に新しいものにむらがる。今まで、音が出なかったのに音が聞こえるだけで、大センセーションです。

そして、カラーとなり、特撮が発達し、今や3Dの時代です。

いつの時代も観客は新しいものにむらがる、そんな心理を描いています。

ただ、それは「技術の進歩」であって、果たして「映画の進歩」と直に結びつくのだろうか。

今の時代だからこそ、あえて、サイレントにしてそれでもテンポ良く、映画にしてしまったのは芸が達者なんですね。

 芸達者と言えば、主役の2人のダンスの上手さも見所(ジャン・デュジャルダンは、あえてジーン・ケリーに似せてメイクをしているよう)ですが

ジョージの飼っている犬がいつも映画でも活躍していて、私生活でもいつも一緒で、犬、大活躍。そこも楽しいですね。

犬の名前はアギー(UGGY)というそうです。この映画はアメリカ・アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門受賞している

のですが、それよりも、カンヌ国際映画祭の隠れた名物、バルムドッグ賞を受賞しているんですね。

グランプリ、パルムドール賞をもじって、映画の中で活躍した名犬に送られるのがパルムドッグ賞です。

 ペピーを演じた、ベレニス・ベニョは2001年の『ROCK・YOU!』で映画デビューってどこに出ていたんだろう、と思ったら

ヒロインの女従、クリスティーナでしたね。ヒロインよりも今、この映画で活躍しているってところもまたこの『アーティスト』という

映画の端役から主役へのペピーそっくりで、妙に納得してしまったのでした。 

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