機械じかけのピアノのための未完成の戯曲

機械じかけのピアノのための未完成の戯曲

НЕОКОЧЕННАЯ ПЬЕСА ДЛЯ МЕХАНИЧЕСКОТО ПИАНИНО/UNFINISHED PIECE FOR MECHANICAL PIANO

2014年1月11日 DVD

(1977年:ソビエト:102分:監督 ニキータ・ミハルコフ)

 原作となったのはチェーホフの戯曲『プラトーノフ』

19世紀末のロシアのある別荘。将軍の未亡人アンナの別荘です。

夏の一日をパーティですごそうとその一族を始め、色々な上流階級の人が集まってきます。

その中に名ばかりの医師がいますが、演じたのは俳優出身のニキータ・ミハルコフ監督です。

 将軍の娘と結婚した小学校教師が、原作となったプラトーノフ。

そして、将軍の息子と結婚したのがソフィアという女性です。

色々な人が集まる中で、プラトーノフとソフィアは、実は若いころ恋人同士でした。思いがけない再会に驚く2人。

しかし、プラトーノフは女主人アンナともねんごろだったようで、いわば、1人の男に妻、愛人、元恋人が集まって顔を合わせてしまったことになります。

 他にも地主たちが集まりますが、パーティらしい楽しい騒ぎよりも、なんかぎくしゃくして、気まずい沈黙が間に絶妙にはさまれます。そこは、一応、大人だから、取り直して、取り直しての繰り返し。

そこからわかってくるのは、どうももう「貴族の時代」は終わった、もう貴族は没落し始めているけれど、そのプライドが捨てられなくて、金はもうないのに豪勢な暮らしを借金しながらも続ける貴族たちです。

 アンナは機械じかけのピアノを買って、皆に見せて驚かせるものの、機械じかけのピアノは弾き手を必要としません。

まるで、もう世の中に貴族はいらない、自動的に音楽は奏でられると弾き手の不要を暗示しているようなピアノ。

 プラトーノフに関しては、元恋人ソフィアは、若かった頃は意気盛んだったプラトーノフが今は大学も中退して

小学校の教師をしていることにショックを受けるものの、まだ「若い頃」に固執しはじめる。

プラトーノフに未練たっぷりの未亡人、アンナ。

そして、そんな夫をまったく疑わないお嬢さんのままのような妻。

 元が演劇ということで、俳優たちの立ち位置などがとても舞台的で、大人の会話の映画ですが、夜の花火のシーンなど

花火が上がると明るくなってプラトーノフとソフィアのやりとりが浮かび上がり、暗くなるとまた、画面から消えるなど

面白い映像の使い方をしています。

 貴族たちは昔通りに固執し、身分の低い者を見下しますが、口ではなんと言ってももう、金はなく別荘は平民から金持になった男の持ち物です。そこにまるで女王様のように君臨して、威張ってふるまう女主人アンナが時々、ものすごく意地悪なのね。

嫌な女・・・というより、困った女貴族です。そこら辺は、笑い方が下品という風に上手く描いていましたね。

キレイなドレスを着て黙っていれば、貴族なのですが、笑う声がものすごく下品で意地悪です。

そういう所はやはり大人でないとわからない、過去というものへの固執なんでしょうね。

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