HK/変態仮面
2014年1月20日 配信
(2013年:日本:105分:監督、脚本 福田雄一)
笑い、というのは難しいもので、辛いや苦しいに比べて実に個人差が大きいものだ、と思います。
そんなことを考えてしまったなぁ、この映画。
変態とひとことに言いますが、何をもって変態というのか?
そんなことも考えてしまう、実は深い映画・・・のようでいて青春コメディなのであります。
エロとか変態ものって、陰湿だったり、後味悪いものはごめんなのですが、この映画、どこかそっぽを向いているようにけろり、としているのです。
とてもくだらないといえばくだらないことを、脱力感でもって、熱血を描いているから、わからない人にはなにがおもしろいのか
さっぱりわからないはずです。
わたしは、この映画を観て、疲れが飛び、元気になって明るい気分になりましたけれど、ひたすらくだらなくて不快な人もいるはず。
わたしが良かったのだから、この場では、そういう人はこっちに置いておいてだなぁ、もうここまでやりぬけばもう、さわやかだよね、と
いう変態仮面について書こうと思います。
この映画は脚本がいいのです。三木聡監督の映画もそうなのですが、万人向けではないけれど、笑いというものに
作る側がもう本気になっているのがよく判るのです。
高校生のキョウスケ(鈴木亮平)は、母がSMクラブの女王、父が刑事なのですが、父は殉職。母は、というと現役バリバリ。
キョウスケは強くなりたくて、拳法部に入っているけれど、実はとっても弱い。
転校生のアイコ(清水富美加)に一目惚れ。しかし、同時に高校を乗っ取ろうとする大金玉男(ムロツヨシ)が率いる軍団が現れる。
ひょんな事から、「女性のパンティを顔にかぶると超人に変身する」という事を知ったキョウスケVS大金玉男軍団の対決。
どうみても高校生に見えない、大金を演じたムロツヨシは様々な仮面(真面目仮面やさやわか仮面・・・)の刺客を送り込むが
キョウスケの変態仮面にはかなわない。
そこで、最後の強力な刺客を送り込む。それが、数学教師の戸渡(安田顕)なんと、もうひとりの変態仮面なのだ。
正義の味方なのに、変態ということで、世間からは白い目で見られ、愛するアイコちゃんに正体をあかすわけにはいかず、
悩むキョウスケ。しかも、刺客はじわじわと迫ってくる。
キョウスケを演じた鈴木亮平の身体が鍛えぬかれていて、ものすごい肉体美なんですね。いやらしいというより美しくも
顔にはパンティで笑ってしまう。
しかし、ムロツヨシの悪役ぶりが、サービス精神満載で、さらに「変態とはこういうものだ、お前なぞ、ノーマル!」と
実は痛い所をつく、安田顕の変態定義が奥が深くて、ただの子供映画にはしていない、奥深さ。
ヒーローものの定石をしっかり踏まえているけれど、そこに強力なおばかパワーを注入して、スパイダーマンの
パロディでもあり、変態とは?という奥の深い所までつっこんでいるけれど、全体はけろりとしていてばかばかしい空気が漂ってる。
いやらしい、というよりばかばかしい、という力がここまでやれば、いっその事、すがすがしくなりますね。
フランソワ・トリュフォー監督の『アデルの恋の物語』のやり尽くし感を彷彿させます(っておいおい)
変態というより、「屈辱をパワーに変える」まで、スパイダーマンは描かなかったでしょ。
この映画の神髄は、なにをもってその人がパワーとして変換するか・・・だと思います。
ムロツヨシ、安田顕の熱演というか怪演、よくできた脚本、鈴木亮平のナイスバディ(特撮に頼らず鍛えた身体でのポージングに
すごく説得力がある)と、とことんさわやかさ、誠実さというかバカ正直さ・・・そんなものが化学反応起こしている。
アイコちゃんのとぼけぶりもかわいいし、女王お母様のエキセントリックぶりも実は言ってる事、正論だと思う。
安田顕が好きだから浮上してきた映画だけれども、目に涙を浮かべ、変態の定義を絶叫する、安田君ラビューだよ!感動した!
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント