ブレス

ブレス

BREATH

2014年2月2日 DVD

(2007年:韓国:84分:監督 キム・ギドク)

 キム・ギドク監督が韓国資本ではなく外国の投資を得て作った映画。

映画論争があって、キム・ギドク監督は韓国では映画をもう撮らない、と聞いてショックを受けていたのですが

こういう形で映画を続けていたのでした。

ただし、撮影15日間、10撮影だけで撮り終えなければならなかったという厳しい条件のもとで、です。

 余計なものは一切入れないで作った素材だけの料理のような映画。

だから、余計な説明は一切なく、何故、この人がこういう行動をとるのか、の説明がありません。

1を知る為に10まで聞かないとわからない、ということが多い中で、1の事を1で描いてしまっているから

観客はわからない人は全くわからないと思う。

ただ、一度も声を発しない主人公の死刑囚を中国の俳優、チャン・チェンで撮ったのですが、その目力ってすごいものがあります。

俳優としては台詞があった方が、いいのかもしれませんが、チャン・チェンは黙って相手を睨みつける、穏やかな表情を見せる、

無表情な鉄仮面のような顔も見せる。たいしたものですねぇ。

 死刑が間近と言われている死刑囚(チャン・チェン)は、自殺を何度も図っている。そのたびに病院に運ばれ、

命をとりとめるの繰り返し、ってところがとても皮肉。

そして、生活は裕福だけれども、夫(ハ・ジョンウ)が浮気をしていて、家の中は冷え切っている家庭の妻(チア)は、

その腹いせなのか、テレビで死刑囚が自殺未遂のニュースを見て、刑務所に行き、自分は元恋人だ、と言って面会を求める。

 妻は面会に行く度に死刑囚に「四季」を持って行く。

壁に季節の写真の壁紙を貼り、冬の寒い時期なのに季節違いの服装で刑務所に面会に行き、歌を歌い、だんだん

死刑囚と妻の間の溝が埋まっていく。

 謎なのは、身分が証明できるものがないと面会は許さないという所を、監視カメラで見ていて特別に許す

保安課長(キム・ギドク監督自身が演じているけれどモニターにちらっと影が見えるだけ)

妻が振り付けで歌うのをカメラで監視しながら一緒に踊っていたり、最初の春は近づこうとするだけで、ブブーと赤いランプで

「面会終了」を命令するのに、夏、秋・・・と季節がすぎていくと・・・・だんだん、2人の近づきを許し、のぞき見ているいるかのよう。

 謎はもうひとつ。

死刑囚と同じ房にいる若い囚人の行動。どうやら死刑囚を同性愛的に愛しているようで、妻との距離が近くなると

嫉妬を見せる行動。

 不条理なようで、ピュアな2人の刑務所の中の四季。

いつも鮮明な色使いを見せる監督らしい、四季の彩り。どぎついくらいの彩りは相変わらずでした。

色鮮やかなのは刑務所の面会室だけ。刑務所の房の中、冷え切った家庭、そして外の風景は寒々とした冬枯れ。

死というものを、簡単には描かないけれど、この映画では何度も色々な死が出てきます。

それが何のメタファーなのか・・・監督はそこまで説明しませんが、この研ぎ澄まされた世界はとても「純ーピュア」な世界です。

 

  

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