八月の鯨
The Whales of August
2014年2月9日 DVD
(1987年:アメリカ:93分:監督 リンゼイ・アンダーソン)
猫も犬も人間も年をとると気難しくなる、と向田邦子さんは書いていました。
この映画に若者は出てきません。
島の岬にあるサマー・ハウスで夏をすごす高齢の姉妹。どちらもすでに配偶者は亡くなっています。
姉、リビー(ベティ・デイヴィス)は、目がみえず、しかも辛辣な性格でずけずけと物を言う。
家事や姉の世話をしている妹、サラ(リリアン・ギッシュ)は若い頃に夫を戦争でなくした戦争未亡人。
岬の家からは海が見え、鯨がやってくる。それを楽しみにしていた若い姉妹。
それぞれの道をいきながら、年をとってまた一緒に暮らすようなった。
老女2人の生活、といっても演じているのがベティ・デイヴィスとリリアン・ギッシュという名優です。
昔は美人女優だったはよくある話なのですが、この2人の役者根性に頭が下がる思いです。
どちらも実年齢での役だから、決して過去の美しい姿ではない。
しかし、どちらも気品にあふれていて、皺ひとつをとっても十分美しいのです。
淡々としているようで、妹セーラは気難しい姉にほとほと嫌気がさすときがある。
そんなとき、もう、別々に暮らそうという思いにもかられる。
しかし、若い時ならともかく、この年になって「新しい生活」はどうだろうか。
セーラとリビーのやりとりで映画はほとんどですので、若い人に退屈かもしれない。
しかし、わたしはこの映画に出てくる「未来が限られた将来」に思いを馳せる2人に感動する。
新しい事を始めるには遅すぎる。しかし、かといって、昔のままを維持するにも無理がある。
そんな迷いを美しく描いていました。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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