毒薬と老嬢

毒薬と老嬢

ARSENIC AND OLD LACE

2014年2月9日 DVD

(1944年:アメリカ:117分:監督 フランク・キャプラ)

 原作は、舞台でジョゼフ・ケッセルリンクの喜劇。

舞台の映画化ですので、映画のほとんどはある一部屋に限られています。

こういう映画は脚本がよくないといけませんね。

そこら辺は、とてもヒットした舞台ということでさすが、と思う訳です。

 ブルックリンの高級住宅街に住む、老嬢アビーとマーサのブルースター姉妹。

この姉妹には3人の甥がいて、真ん中のモーティマー(ケイリー・グラント)が結婚する所から始まります。

モーティマーは有名な演劇評論家で、結婚に対して辛辣な意見の持ち主だったのに、エレーン(プリシラ・レイン)と

結婚申請をしようとするところを雑誌記者に見つかってしまいます。

 あわてて、叔母の家に飛び込んだモーティマー。慈悲深く、良き人として有名な叔母たちの家なのですが、そこで

モーティマーは長箱に入った老人の死体を発見してしまう。

一体これは・・・・と絶句するモーティマーににこやかに説明する叔母姉妹。

身よりのないバプチストの人を家を貸すという看板の元、「美味しいワインで安らかな眠りにつかせてあげたのよ」

いわく「お爺さんの実験室にあった毒薬を覚えている?マーサがピクルスと同じように調合したのよ。

ワイン4リットルにヒ素をスプーン一杯。ストリキニンを半サジそれに一つまみの青酸カリ」

 びっくりして、あわてるモーティマーにかぶせるように、にこやかに「ちゃんとお葬式もするし・・・」

モーティマーの弟、テディは自分をセオドア(テディ)・ルーズベルト大統領だと思い込んでいるし、

そこに、殺人犯で追われている長兄ジョナサンが整形外科医を連れて、ついでに死体も運んでくる。

警察は巡回に来るし、訳のわからない新妻、エレーンは騒ぐし、長兄は叔母と弟2人を精神病院に送り込んで

自分が遺産を独占しようと思いついちゃうし。

 ブルースター家の居間には色々な人たちが、わあわあ、言って集まっては騒ぎ、その中で唯一真実を知っている

モーティマーはキリキリ舞い。

なんとものんびりにこやかな叔母姉妹。さて、この騒動どうなる?という訳です。

 『まぼろしの市街戦』と言う映画があって、戦争で爆撃されると村人たちが全員逃げ出した村で、精神病院の患者だけが

とりのこされ「王国」を作る、という話でした。

誰がまともで、誰が狂気なのか?そんな事をこの映画で考えてしまいます。

まともなはずのモーティマーをよそに、叔母姉妹はにこやかに殺人するし、弟はひたすら大統領の仕事に忙しい。

凶暴な兄は迫ってくるしで、慈善というのがこの映画の鍵でしょう。

 あくまでも、叔母姉妹は「慈善事業」として美味しいワインで心安らかに・・・と思っているし、

弟はひたすら大統領の仕事というのは国民のため、と堂々としている。

日本でも翻訳舞台として上映されたのですが、この映画では、叔母姉妹と弟テディは舞台の役者さんが演じていて実に軽妙ですね。

整形を繰り返す為に、いつも外科医(ピーター・ローレ)を連れて歩いているというのもなんだか笑ってしまう。

 この時代の映画だから死体は一切出てきません。あくまでも、地下室とか箱の中に死体がある、ということで

もう台詞のやりとりが忙しい映画。字幕がついていかないくらいですが、英語はそんなに難しくはないと思います。

舞台の映画化って、人気原作小説、漫画の映画化よりも確実に面白くできますね。人間が演じるという実績があるからです。

舞台は舞台で面白いのでしょうが、この映画も観ていて疲れるぐらい、なんだか頑張っているのです。

わたしは好きだな、舞台の映画化。

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