殺人の追憶

殺人の追憶

2004/03/29

シネマスクエアとうきゅう

 

ポン・ジュノ監督は「ジャンル分けできる映画に興味はない」と言っているそうです。

前作『ほえる犬は噛まない』も、一口でジャンルで分けられる映画ではなく、色々な面があって

とても好きなのですが、この映画も「実話」「刑事もの」「サスペンス・ミステリー」「ユーモア」色々な要素が

隙なく続いてその緩急にぐいぐいひきこまれました。

そしてこの底辺にずっと流れているのは「人間の執念と無念」かと思います。

犯人の犯行にも執念めいたものが感じられる事件ですし、それを追う(最初は)対照的な2人の刑事の捜査も

執念なしでは続かないもの・・・だと思います。

冒頭、少年がバッタを捕まえ、黄金色の米畑が広がります。

このシーンの美しさと奥深さだけでもう、これだぁ~って感じでした。事件はかなりグロテスクな事件ではありますが

見せ方が、あからさまでないところ、尋問が拷問のようで、すぐ暴力、強制自白のようであっても、

何気なく「拷問禁止」の張り紙がしてあったり・・・でよく見ていると監督の良識が伺える一面でした。

『ほえる犬は噛まない』もユーモアとブラックな面が交互に出てきて先が読めなかったのですが、この映画も

犯人は誰か、犯行の鍵は何か・・・といったストーリー的なことと同時に、悲惨とユーモアが同居します。

その細かい配慮が見れば見るほどみつかって、私は堪能できました。

ソン・ガンホの田舎(地元)パク刑事VSキム・サンギョンのソウル(都会)のソ刑事のやりとりも緊迫感もあれば、

初対面の時の飛び蹴り(笑)とかユーモアもあります。

パク刑事と同僚のチョ刑事が、捜査の待ち時間にあやとりをしていたり、パク刑事のお風呂屋作戦とか・・・今だ

未解決の事件で当事者にはまだ終わっていない事件なのですから、フィクションとノンフィクションを綿密に

織り込んでいる上手さ。

ソン・ガンホは相変わらずのユーモアあり、シリアスありの存在感、キム・サンギョクは『気まぐれな唇』のあの、

いすぬけてなんとも優柔不断なギョンスと大違い、大変スリムアップして別人のようです。男らしい骨太感が

いいですね。

顔のアップがこれほど多くても疲れなかった最近めずらしい映画であり、ラスト・シーンは秀逸です。

観ているこっちも「・・・ショック」

雨のシーン、トンネルのシーンとても印象に深く残る映像も、緩急わきまえた音楽もとても良かったと思います。

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