永遠(とわ)の語らい
Um Film Falado
2004/05/06 シャンテ・シネにて 2003年ポルトガル=フランス=イタリア合作:95分
監督:マノエル・ド・オリヴェラ
客の感情だけではなく、理性も納得させたい。
派手な作品であれば、人は振り向きますが、
それらには実は魅力もなければ深さもありません。
観客はもっと素晴らしいものに値するものだと思います。
私の映画が、観客に何かそれ以上のものをつたえるものであって欲しい、と思います。
今年95歳になるオリヴェラ監督のこの映画への言葉です。全文載せてしまいました。
ヨーロッパの歴史、文化、文明をめぐる旅、会話の映画です。そして現代をも見つめた冷静な視線。
地中海の船旅に出た歴史学者の母と娘。行く先々の遺跡で、好奇心たっぷりの娘の質問に丁寧に答える母。
そして客船の晩餐では、アメリカ人船長(ジョン・マルコヴィッチ)、フランス人実業家(カトリーヌ・ドヌーブ)、イタリア人の元
有名モデル(ステファニア・サンドレッリ)、ギリシャの国民的歌手(イレーネ・パパス)がテーブルを囲み、それぞれの母国語で、文化とは、文明とは、人生とは・・・といった知的な会話が繰り広げられます。
母と娘がとても謙虚な態度に対して、大人たちはそれぞれの忌憚ない意見を言い合う。
その様子は、とても刺激的であり、含蓄があり、迫力があります。さすが役者を集めましたね。
これはヨーロッパ遺跡めぐりの映画ではありません。遺跡に行くと、団体ツアーが必ずぞろぞろいて、ガイドの説明を聞いてぞろぞろ通り過ぎていく風景が繰り返されます。それがなんとも虚しく映ります。一体何を見ているのか。
監督は歴史に詳しい母と好奇心あるれる少女の会話を描くことで、本当の文明への疑問と現代というものを見つめて提議
しているように思います。
それが、母娘だけでなく、ヨーロッパ各国の代表・・・のような大人たちの会話もじっくり見せることでより深さを出しています。
そして「永遠に続く文明などない」という台詞の通り、その理想郷のような晩餐会も現代的な出来事で断ち切られてしまう
ショック。
監督の冷静な目が貫かれ、予定調和に流れることなく自説を貫いた姿勢が、勇気あって潔いです。
話がどうとか、ラストがどうとか・・・そんなことに目がいってしまうのは、観光地をぞろぞろ歩くだけの団体観光客、そのもの・・・ではないでしょうか。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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