スキャンダル
Untold Scandal
2004年7月28日 シネカノン有楽町にて 2003年韓国:124分:監督 イ・ジョヨン
私は観ていて源氏物語を思い出しました。
「そもそも『源氏物語』はフランスの心理小説と似通った部分があるから、キャスティングは全部フランス人で構想した」と書いているのは『窯変 源氏物語』を書いた橋本治→原作はフランスのラクロの『危険な関係』→この映画って源氏っぽい、という三段論法でございます。
宮廷人・貴族たちの見栄と意地と出世欲とが渦巻く世界・・・そこでの恋愛とは愛情でがあるのではなく自分の保身のため、または自分の地位を高めるための画策の手段。ただの好色なだけではない複雑な心理合戦。
「領主様」と呼ばれる特権階級(両班)のチョ・ウォン(ペ・ヨンジュン)とそのいとこ長官の正妻チョ夫人(イ・ミスク)。チョ・ウォンは特権階級であるため風流三昧の生活、「女あさり」に余念がない。チョ夫人は子供が出来ないため、夫は16歳の側室を迎えようとしている。余裕の顔の裏は複雑な思いで策略をめぐらす。いとこのチョ・ウォンにやってくる側室に「手を出し」妊娠させてしまえ・・・という復讐案。
しかし、チョ・ウォンが今、ねらっているのは、夫の死後貞節を守っているので有名な未亡人チョン・ヒョン(チョン・ドヨン)。
純真ですぐに落ちそうな16歳の女の子には興味ありませんね、なかなか手にはいらない女だからこそ、追い求めてるのですよ・・・・では、こういう取引はいかがかしら????・・・・ほ、ほう、それはおもしろいですな・・・では早速おやりなさいませ・・・・策略が策略を呼んで、また、二転三転する展開。
そして、ここにキャスティングの妙、が出てくるのですね。
ペ・ヨンジュンは『冬のソナタ』でハンサム&誠実さが人気の俳優。才色兼備のチョ「策略」夫人は『情事』で義理の弟から求愛されて戸惑う真面目な人妻だったイ・ミスク。貞節を守り通そうとするチョン・ヒョンは『ハッピー・エンド』で夫を尻目に浮気し放題の奔放な妻を演じたジョン・ドヨン。
3人が3人とも今回全く逆のキャラクターを演じきっているのがとても興味深く、おもしろく思いました。特に女性2人の変化ぶり。ここがこの映画のポイントなのよねぇ。
韓国李王朝時代の衣装、美術、建物、小物、風俗、食事・・・などの描写がが実に美しく細かくて見事に完成度高いので、そういう舞台の作り込みのすごさも見所。
様々な衣装、化粧の仕方、髪飾りや装飾品の数々、屋敷の中の調度品、美術品、食事のしきたり、書物などの文化、儒教の教えが厳しい時代、またキリスト教が普及しはじめたころの様子など本当に感心してしまうのでした。カルチャー・ショッック受けますね。
いちいちとりあげたらキリがないのですが、チョン・ヒョン未亡人と側仕えのウンスクが、特殊な花と葉をすって爪にぬりつけ、指先を葉でくるんでマニュキュアをするところとかねぇ。かわいらしくもあり、感心したり・・・
時代考証に関しては、忠実にした部分とこの映画の効果をねらった創造の部分があるそうですけれど、人間心理の移り変わりとその背景のしっかりした描き方、上手いですねぇ、凄いですね。
私はこういうきちんとした映画がとても好きなんですね。俳優や大胆な性描写といった話題性よりも関心は、映画の作りです。
人間心理が移り変わって、権威も立場も逆転して転がっていく後半も目が離せない緊張感があって、監督は『情事』『純愛譜』のイ・ジョヨンらしさ、と監督らしくない部分があってそこまた見所ですね。う~ん、フランス映画の『めざめ』と同じ、なんかねっちり~とした所がとても好きだったりします。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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