オテサーネク

オテサーネク

2004年7月19日 シアターイメージフォーラムにて 2000年チェコ=イギリス:127分:監督 ヤン・シュヴァンクマイエル

あまりに緻密なアニメーションのため、一年で15分程しか作れない、というチェコのシュヴァンクマイエル監督が実写とアニメを合成させ、民話をもとに残酷で、グロテスクで、ユーモアと諧謔にあふれた独自の毒のある世界。

タイトルのオテサーネクというのは、チェコの昔話で、子供が欲しいが、恵まれない夫婦。夫が木の切り株が赤ちゃんに似ているので、赤ちゃん人形を作ると、それに生命が吹き込まれ・・・困ったことに次々と人や動物を食べる怪物になってしまう、

というお話。映画の中では、少女が読み上げる昔話をアニメーションで出しています。

現代のチェコのある夫婦。やはり子供が欲しくても、授からなくて民話と同じことをする。そして民話通りになってしまう。

最初に産婦人科で診察を受ける妻を待つ夫が、窓から下を見ると・・・・魚の生け簀のようなものから網ですくって赤ちゃんを量り売りする風景を見てしまう。しかも網を持って順番を待っている客の最後は自分である、という幻想からして強烈。

奥さんの子供が欲しいあまりの狂気ぶりっていうのが凄くて、木で作った人形をもうもう自分の子供だと信じ込んでしまう狂気とそれを見つめる夫とのやりとりに加え、アパートの住人たちの視線の怖さ。特にとなりの家の少女は、鋭く事の真実を見抜いてしまうけれど、大人には口を開かずにいるのも怖い。

いきなり赤ちゃんが出来るのは不自然だと夫は説得するけれども、妻はそれなら偽装すればいいと、1ヶ月~9ヶ月までのおなかにいれるクッションを用意して、わくわく出産を待つ結果となってしまう。想像妊娠というか狂気妊娠が進むにつれ、すさまじさエスカレート、しかも、9ヶ月が過ぎると、切り株の赤ちゃんには生命が宿ってしまうのです。

その赤ちゃん、オティークとうのが、見た目は切り株なんだけど、声は赤ちゃんの声を使っていて泣き声、笑い声、むずがる声・・・リアルで、どんどん大きくなって、食べたい、食べたいと。

それを必死になって隠そうとする夫婦のやりとりがなんともグロテスクなんですけど、ユーモラスで、民話が読み上げられると・・・・先はどうなってしまうわけ?と目が離せません。

オティークというのはとにかく食べたい、というのを象徴するかのように、この映画では食事、料理、それを食べる人間の口のアップを多用していて、人間の食べる、という行為をまたグロテスクに見せていますね。

では、観ていて不快か、というと映像はグロテスクな所は避けていて、わからせる、という上手さに満ちていて、引き込まれますね。オティークの動きなんかもなんだか、かわいらしいようにも・・・思える。

やってることは凄いのだけれども、その見せ方、の上手さにショックを受ける映画です。

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