蝶採り
La chasse aux papillons
2004年7月2日 渋谷シネアミューズ・イーストにて 1992年フランス=ドイツ=イタリア:115分:監督 オタール・イオセリアーニ
フランスのお城に住んでいる老女たち、客人たち、その町の人々をユーモラスに描きながら「伝統の没落」を描いていますね。深刻なテーマを喜劇的にしてしまうユーモアで粋な感覚は『素敵な歌と舟はゆく』に似ています。
お城というのはそれはそれは広大で立派なものですが、実は今となっては維持が大変。アンティークな家具を売ったり、観光客を呼んで金をとったりして、なんとかもっているという感じです。
しかし、この館の主の老女はプライド高いのでしょうね。日本人の不動産屋が買いたいともちかけても頑なに拒絶しています。同居しているしたたかな老女、やる気のないメイド、ケチな隣人、インド風の格好をして歌い踊っている客人たち、
街の教会仲間とのプラスバンド、ブルテリアやグレイトハウンドの犬たちのあれこれが数珠繋ぎのように描かれます。
常にワインと歌があり、音楽があり・・・ほのぼのしていて、隣人のケチぶり・・・床にワックスをかけているから、靴のしたに布をつけて、犬にも靴下をはかせて歩いていたり、ピアノの横には鳥かごがたくさん並んでいたり。アラブのマハラジャを家に招いてなんか宝石の売買を交渉中。敷地ではなにをやってるのかさっぱりわかりませんが、ブルトーザーががぁがぁ動いている。
主のいとこ、という老女が自転車にのって飛んで歩いてなかなかのしたたかばあさんです。実質家を切り盛りしているのはこのいとこ、なんですね。『月曜日に乾杯!』でくわえ煙草にサングラス、車にのっておじいさんの墓参りに行くナルダ・ブランシェです。
しかし、主が死んでしまうとほのぼのは一変してしまいます。遺書で相続は全てロシアで貧しく暮らしている妹に・・・と知った遺産目当ての親戚たちは大モメ。日本人不動産屋はさっそく、動き出す。
建物、敷地は不動のもの、まさに不動産なんですけれども人の気持ちはどんどん動いていく。なんとも喜劇的で悲劇的。
それまでは青空だったのが曇がち、大雨とコントラストがはっきりしています。
イオセリアーニ監督の映画では音楽がとてもたくさん使われているのですが、どれも断片的。オープニングとクロージングの曲は同じ曲で、フランスのサロン風の音楽です。そしてグルジアで伝統的だという、混声合唱の数々。
1人が歌いだすと、次々に歌が広がっていく。それはとても心和むシーンとして効果的ですね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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