歌うつぐみがおりました

歌うつぐみがおりました

Ikho chachvi magalobell

2004年7月2日  渋谷・シネアミューズ・イーストにて 1970年グルジア:83分モノクロ:監督 オタール・イオセリアーニ

日本では『素敵な歌と舟はゆく』『月曜日に乾杯!』が公開されているグルジア出身、1979年にパリに移住したオタール・イオセリアーニ監督はグルジア時代には撮る映画がことごとく上映禁止になりました。旧ソ連の圧力だった訳ですが、今回日本初公開の4本と公開済みの2本、計6本がイオセリアーニに乾杯!という特集上映されました。

トリビシ(グルジアの首都)に住むオーケストラのティンパニ担当の青年、ギア。彼は毎日がとても忙しい。あっちふらふら、こっちふらふらしてオーケストラの仕事もティンパニの部分だけすべりこみセーフ、で演奏して指揮者からは睨まれています。忙しい、といっても、女の子に次々声をかけ、男友達との集まりに顔を出し歌を歌い、家族のつきあいをこなし、なんという目的もなく今、目の前にあることだけに熱心で忙しいのです。

街で映画の撮影やっているとちゃっかりカメラを覗いている、微生物の研究をしている女の子についていって、顕微鏡を覗く、病院の医師の友人の所へ行って、ちゃっかり手術にたちあってる・・・

友達もたくさんいて、家族も大切にして遊びに忙しい、なんとも憎めない怠惰な好青年のあれこれを描きながら、ギアのなんだか忙しいだけで人の合間をひょろひょろとしているむなしさみたいなものが感じられました。

監督自身、インタビューで「この主人公は移り気でただ人生を愛しているだけで苦しんでいる。うまくやっているようで実は苦しんでいるんだ」ということを言っています。

そう、ギアはなにがしたいのかさっぱりわからない若者なんですね。過去も未来もなくてあるのは今だけ。瞬間瞬間を楽しく過ごしているだけで、なんか目のまわるような移り気ぶりは見ていて疲れないかなぁ~と思ってしまうほどです。

これといって特徴もなく、人あたりがよくて、憎めないけど、人と深くかかわることは避けているようです。

ラスト、ギアは道で車の事故にあってしまいますが、次は時計屋のシーンでこわれていた時計がカチカチと動き出す歯車のアップでおわります。動き出した時計のように生きているのか、動き出した歯車(機械)につぶされてしまったのか・・・

それはわかりません。わからなくていいのだと思います。ギアという1人の人間を追っていくことがこの映画だと思いますから。

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更夜飯店

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