らくだの涙
The Story of the Weeping Camel
2004年9月2日 渋谷 ル・シネマにて
(2003年:ドイツ:91分:監督 ビャンバスレン・ダバード、ルイジ・ファロルニ)
予告編では産んだ子らくだに近寄ろうとしない母らくだ・・・の話のようでしたが、観てみるとモンゴル遊牧民族のある一家のドキュメンタリーというか爽やかな人間ドラマ?
一家の構成はおじいさん、おばあさん、息子夫婦、孫3人、家畜多数、犬一匹、猫一匹。
何故ドイツがモンゴルを?と思ったら、監督の1人、ビャンバスレン・ダバードがモンゴル系ドイツ人だったのですね。(しかもこれ、映画学校の卒業制作映画)
祖国、モンゴルへの望郷の思いみたいなものが貫かれていてとても優しい視線ですね。
放牧生活といっても厳しい天候、都会までは遠いなど、大変な部分もあるのですけれど、あまりそちらは強調しないで、自然に囲まれて、自然と一緒に生きている自然体の家族がとても観ていて気持ちいいです。
そして馬は使わずらくだで家畜を育てる生活というのが私なんかには斬新。
らくだを結ぶひもはらくだの毛を刈り取っておばあさんが丁寧にロープに編む・・・斬新・・・子供たちはもう立派にらくだに乗って働いている長男(推定12歳)と子ヤギ係の次男(推定6歳)、まだまだ幼児の女の子(推定3歳)が学校にも行っていないのですけれど、親に愛され、自分の役割をきちんと守って暮らしているのが、もう、甘やかされた日本の子供、見習いなさいとか・・・つい、思ってしまうのでした。
らくだたちの中で最後に出産したらくだは何故か産んだ子らくだの世話をしない・・・立派な育児放棄、ネグレクトであります。(『誰も知らない』より)
そのために馬頭琴で音楽を聞かせるという儀式をする、しかし馬頭琴の奏者は都会(一応ね)にしかいないので、長男と次男がらくだに乗って迎えに行くのですが・・・次男が「僕もいきたいよう~~~」と言えば、親は甘やかさず一人前の働き手として送り出す。次男なんて小さくてらくだに乗るとコブの後ろに隠れてしまうくらいなのですが・・・・
長男くんが、文句もいわず、次男の面倒を見ながら・・・が結構危険な「冒険旅行」ですね。でも長男がとてもしっかりとしているので安心感。んも~誠実な良い大人になるわねぇ~長男くん。
次男は都会に行くと、テレビがあったり、アイスクリームが食べられたり、ゲームが出来たりってつい遊んでしまうのです。
でもしっかり者の兄の言うことはよく聞くし、立派ならくださばきもびっくり。
儀式では若い母が馬頭琴にあわせて歌を歌うのですが、この歌声が風に乗って遠くまで遠くまで飛んでいくような美しい声。
この映画を観て思ったのは、親子とか家族のあり方、でした。一家総出で家畜の世話をするから若いお母さんもよく働くけれど子供たちの面倒もとても自然にこなしている。口数少ない若お父さんの頼もしい姿。老人とはいえ出来ることは分業して働く祖父母。そして子供たちは自然や動物に囲まれ自然の中でのびのびしている。なんかとっても羨ましい家族の姿でした。ラストに家族がそれぞれカメラにむかって恥ずかしそうに笑っているその顔もまたいいです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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