砂と霧の家
House of Sand and Fog
2004年10月29日 新宿厚生年金会館ホールにて(試写会)
(2004年:アメリカ:126分:監督 ヴァディム・パールマン)
この映画では海辺に建つ一軒の家を取り合うという設定なのですが、これは「ひとつのものをそれぞれの言い分を持って取り合うことのつらさとむなしさ」の象徴でしょう。
原作、原題の「砂と霧の家」というように砂で出来た城のように儚く、霧に包まれて見えなくなってしまう・・・そんな漠然とした何かを取り合う、対立するなんとも空しく、重いムードが全編ただよっています。
せっかく親が残してくれた家なのに、アルコールや薬物依存で身を持ち崩したあげく、所得税未納で差し押さえ、家を追い出されてしまうキャシー(ジェニファー・コネリー)とイラクから亡命してきて家を転売することでどうにかやってきたベン・キングスレーの演じる大佐一家。
しかし、どちらも家に対しては、所有権を持つということになってしまい、対立する2人ですが、そこにキャシーに近づいてくる警官の出現により話は上手く示談になりそうなところがらがらと悲劇になだれ込んでしまうのです。
人種が違うということから価値観や考え方の違いが対立にどんどん拍車をかけていく様子、アメリカ人の外の世界への無理解が、見え隠れするところ、「一軒の家」というのはあくまでも今、世界で争われている原因の何か、なんですね。
そんな中で自分に嫌気がさしながらそれを最初は認めようとせず、他人のせい、人に依存することしか出来ないキャシーが、最後に「自分の家=自分」への見方を変える、つらい道のりをジェニファー・コネリーが熱演していますね。ファースト・シーンがラスト・シーンにつながる・・・という涙なのか汗なのか・・・で顔をべとべとにしてやっと自分の言葉を言う、その暗い黒い瞳の力はとても強いです。
ベン・キングスレーはイランから亡命ということなのですが、その辺はアメリカへ移民出来たのだから、もう祖国には帰れないという必死さがちょっときれいごと的に描かれてはいましたが、奥さんのショーレ・アグダシュルーとかが上手くサポートしている、という感じです。
この問題の「海辺の家」が実際どこにあるのかという具体的な地名は出てこないところ、ますますメタファー的ですね。
更夜飯店
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