青春愛人事件

青春愛人事件

Sudden Lover(青春愛人事件)

2004年10月27日 六本木ヴァージンシネマズスクリーン2にて(東京国際映画祭)

(2004年:中国:90分:監督 ハオ・ラン)

どんどん変わりつつある中国の現代的で刹那的な恋と旧世代の中年の恋を「青春」「愛人」「事件」という3つの章に分けて描いています。

アパートの隣人同士の若者のシャオ・シエ(リウ・イエ)と中年男、モウ。それぞれ恋人がいるのですが、そこに小悪魔的なお金持ちの少女、リュウバが現れる。

最初はモウがひっかけたはずのリュウバですが、シャオ・シエを気に入って大接近。モウは恋人の昔の男が現れてショック。

その昔の男が事件を引き起こす。それに巻き込まれていってしまう・・・

前半モウは中年男のいやらしさ全開なのですが、隣人シャオ・シエはなんとも誠実青年ですから親しくつきあっている。だんだん1人の寂しい男の面を見せて、小悪魔、リュウバも最初はやることなすこと可愛げなくシャオ・シエも振り回されてうんざり・・・ですがリュウバも寂しい少女の面を見せて、少しずつシャオ・シエの心の支えになっていく。

と言う風に好青年、シャオ・シエ以外が皆、一見嫌な人なのですが、実は、細やかな情を秘めているという外見からはわからない人間の良さみたいなものを引き出すあれこれがスムーズで上手いですね。

事件の鍵を握る男も極悪人ではないという目線です。また高層アパートが林立する現代の中国の都市の姿と昔ながらの家が同居する新旧まじった不安定な様子、よく伝わってくる映像の数々です。

そしてラストで全部をひっくり返してしまうストーリーテリングの上手さというか、観ていて呆気にとられるという今までの中国映画にはないメリハリの付け方にびっくりしました。

監督は、主役の青年、シャオ・シエには最初からリウ・イエの目の力に魅力を感じ、彼の為に脚本を書いていったという熱の入れよう。

リウ・イエは人の良い働く青年ですが、ちょっと覇気がなくてがっくり肩を落とす後ろ姿がいいです。悲しげに伏し目がちになる時の睫毛が長いですねぇ。リュウバ役の女の子も生意気な所と可愛い所、くるくる変わる表情がとてもいいです。人間の不変さと変化、あわせて中国という国の不変さと変化を冷静に見ることができるのはやはりアメリカで映画を学んだ若い監督ならではの良さですね。

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