昼顔
Belle de Jour
2004年10月16日 有楽町スバル座にて
(1966年:フランス:100分:監督 ルイス・ブニュエル)
オタール・イオセリアーニ監督が『蝶採り』というフランス貴族の末裔を描いた映画のキャスティングについて「館の女主の役は普通の女優ではダメだ。もう、生まれつき靴を履くときに使用人にはかせるように、すっと足が出るような人物でないといけない」ということを言っているのですね。
この映画のカトリーヌ・ドヌーブにはその「生まれつき持っている気品」というものがあるのです。それは台詞ではなくカトリーヌ・ドヌーブのしぐさ、話し方、表情に演技とは別の気品が満ちています。今の若い女優さんがいくら綺麗で美しい服を着こなしていても、これだけは逆立ちしても得られない、持てない雰囲気をまざまざと見せられる映画。
そして裕福で何の不自由もない生活をしているセヴリーヌが、暗い欲望に打ち勝てず、高級娼婦「昼顔」として昼は娼婦、夜は貞淑な妻という二面性を持つことに快感をおぼえ、悲劇へと向かうのがとてもゆるやかでスムーズです。
セヴリーヌは夢を見ます。それはとても貞淑からはほど遠い欲望の数々で必ずといっていいほど、馬車が出てきます。この馬車の音と馬が首につけている鈴の音がすると不穏なねっちり~とした危険なムードが漂いだす、という雰囲気の盛り上げ方も素晴らしい。
ラストは落葉散る馬車道、明確な結末をあえて描かず、どちらともとれるような、ちょっと怪奇めいているけれども上品で美しい映像で終わる・・・なんともいえない余韻がずっしりきますね。とても重みがあります。
貞淑な妻から娼婦になってからのカトリーヌ・ドヌーブの微妙な変化というのも見物ですね。なんとも活き活きとしてくるのがとても怖く美しい。さすがルイス・ブニュエル監督です。。。
更夜飯店
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