柔道龍虎榜

柔道龍虎榜

Throw Down

2004年11月24日 有楽町朝日ホールにて(第5回東京フィルメックス)

(2004年:香港:95分:監督 ジョニー・トー)

黒澤明監督の『姿三四郎』をモチーフにしていますが、随所にリスペクトとユーモアとノスタルジィがあふれているのがまず、いいです。

冒頭、ススキならぬ香港の背の高い草が繁る所で男が柔道の対決をしている・・・カメラが移動すると、1人の男が日本語で「姿三四郎」の歌を熱唱している、というところからして、かわいい!

話はもと高名な柔道家(ルイス・クー)が今は身を落としてクラブで酔いどれながらギター弾きをしている。賭博で借金だらけの生活をしている所に、燃える柔道青年(アーロン・クォック)が現れ、柔道をまたやらないか、と持ち出す。柔道道場は今は人がいなくて維持するのはもう無理だから柔道試合で勝って道場を盛り返したいと思っているのです。

しかし、映画はあまり熱心に柔道の鍛錬などを描きません。『姿三四郎』ではないのですから。あくまで、柔道というものを通して挫折した1人の男が目覚めるというもの。

バーのレトロな雰囲気(今時こんなクラブ、あるのかな、日活映画みたいな雰囲気)、男たちの喧嘩も柔道の投げ技ばかりだったりかなり笑えます。

歌手志望の女の子も混じってきますが、やはり男の世界を描かせたらピカ一のジョニー・トー監督です。

ルイス・クーVSアーロン・クォック、また高名な柔道家、レオン・カーファイVSルイス・クーなんて正統柔道というよりスタイリッシュ柔道。

また、お得意、夜のシーン。街灯がぽつん、ぽつんと人気のない道を照らす風景など、とても雰囲気があっていいですね。

道場の師匠の息子はちょっと知恵遅れで、人に会うと「俺、姿三四郎、君、檜垣」と必ず言う。

冒頭熱唱しているのも彼ですが、クラブで喧嘩一色の中で1人でマイクを持ってまた熱唱していたり・・・なのですが、道場のチラシを一生懸命、道で配る、捨てられたチラシを拾ってまた配る、師匠が亡くなって施設に入れられても戻ってきて、また父と一緒の時のように食卓の準備をする・・・なんて、健気で泣けてきますね。自分は柔道は出来なくても柔道が大好きなんです。

アーロン・クォックは、髪型坊主狩りにして『姿三四郎』の藤田進によく似ていてまっすぐな青年。ルイス・クーの堕落ぶり、賭博場での顔から柔道に目覚める時の顔の違いなど、観ていてとても楽しい。これ、大事。

ジョニー・トー監督は、共同監督などもしてたくさんの商業映画を作っています。ジャンルもハードボイルドから恋愛コメディまで幅広く活躍されていますが、監督自身はやはり、『暗戦・デッドエンド』『P.T.U.』とこの映画が自分では気に入っているとのことで、観ていて男のハードボイルドが好きだってわかりますよね。

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