変身

変身

Die Verwandlung

2004年11月18日 渋谷 ユーロスペースにて

(2002年:ロシア:90分:監督 ワレーリィ・フォーキン)

不条理小説といわれるカフカの『変身』

これをどう映像化するのか、理由なく突然毒虫に変身してしまったグレーゴル・ザムザをどう描くのか・・・とても興味ありました。

最初に雨の降るプラハの街に汽車が着く。石畳の上に雨が降り注ぎ、汽車からは水蒸気がたちのぼる・・・という風景が重厚で美しい。そして雨の中を家に帰った青年、グレーゴル・ザムザ。

そして朝起きると変身、していて本人も家族もびっくり驚愕なのですが、台詞は少なくパントマイム風に描いているのですね。

何故、こんなことが・・・というのは家族にとっても災難。しかし本人はもう人間ではない。人間として接していた家族が、だんだん虫けらとしてグレーゴルに接するようになる、その変化をブラック・ホームドラマ的にしています。

観ていてグレーゴル役のエヴケーニイ・ミローノフの変身ぶりが最初は、ユーモラスなのですが、だんだん怖くなってくる。

そしてグレーゴルが見る夢。その夢はとても閉鎖的で息がつまるような狭い悪夢。時には真っ白に光り輝く外の世界。この夢がマグリットの絵のようにまた不条理なんですね。不可解を通り越して不条理。

家族から見放されてしまった主人公と、突然、厄介者になってしまった主人公から解放される家族。最後のプラハの市電の中での両親と妹の至福の顔がまた怖い。美しくて、ユーモラスで、哀しく、残酷な映画となっていました。

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