オランダの光

オランダの光

Dutch Licht, Hollands Licht

2004年11月17日 東京都写真美術館ホールにて

(2003年:オランダ:94分:監督 ピーターーリム・デ・クローン)

「オランダの光」というのは17世紀、レンブラント、フェルメールなどのフランドル絵画と言われる絵画によく使われた太陽光線の描き方です。光と影の作る陰影を巧みにとりいれた絵画。

このドキュメンタリーは絵画の光を探求するものではなく、絵画の光を見て、「現代にこのオランダの光が残っているかどうか」の探求ですね。

そしてオランダの光はオランダだけなのだろうか、ということで南仏プロヴァンスやアメリカのアリゾナ砂漠といったところを取材して、という光の探求でもあります。また、ヨーロッパの国ごとの光の違いを長距離トラックの運転手たちにインタビューして、実際目にして違いはどうか・・・というのも視点がおもしろい。トラックの運ちゃんたちは、仕事柄天気や光などに敏感で鋭い指摘がありますね。

しかしまず監督がやることとは、オランダのエイセル湖のほとりの防波堤にカメラを一年間固定して、その毎日の風景が作り出す光や影を映し出し、それを日記のように見せることです。絵画からということで、画家やキュレーターなどの専門家の言葉を聞くと同時に自分でできることをやってみる、という姿勢がいいのですね。17世紀の画家たちは同じ風景を見ていたのだろうか、と。

実際、一年を通して同じ風景を熱心に見るということはあまりないことで「普通の風景」として気にとめなくなってしまうところに気が付いて、または観る者に気が付かせるという効果になっています。

オランダの天気というのはあまり晴天というのはないですね。曇りがちでその重くたれこめた雲の隙間から光が射す、または、曇り空を湖面が反映してまさに絵画にでてくる灰真珠色の風景が広がる美しさ。

それから物理科学者による、水槽での光の反射による「オランダの光」は何故出来るのか、という科学的な試みをして、物理学的にも灰真珠色の光の原因というものを探る。

風景とか過去の名画とか美しいのですが、この実験で鏡に反射する光の映像というのもまた美しくて映画的。実に明解な答えです。

ただ、理由を追うのではなく、説明を聞くのではなく、自分で考え、実験して、証明してみせるというのがとても興味深い点です。 

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