復讐者に憐れみを

復讐者に憐れみを

Sympathy for Mr.Vengeance

2005年3月8日 新宿武蔵野館にて

(2002年:韓国:121分:監督 パク・チャヌク)

英語タイトルもずばり、「血の復讐氏への共感」という・・・血で血を贖う復讐連鎖劇です。

パク・チャヌク監督が復讐三部作として作った第一作目。カンヌ映画祭でグランプリを受賞した『オールド・ボーイ』は第二作目にあたります。

『オールド・ボーイ』は復讐を描いても、あまり登場人物は多くないのですが、これは実にたくさんの復讐が石が坂を転げ落ちるように発生してしまいます。その悲劇に対しては、批判的なのではなく同情的なんですね。映像はクリアで衝撃的なのですが、子供を誘拐されたソン・ガンホ、誘拐したシン・ハギュンとペ・ドゥナの2人もお互い殺し合いになりますが、結局悪いのは誰か、、、というとその後に隠れている見えない社会といった社会批判的な視線。松本清張社会派推理ドラマみたいです。

復讐の理由、または動機が『オールド・ボーイ』とは違って、意図的ではなく偶発的な悲劇。

ソン・ガンホはいいひとから復讐に燃える男、シン・ハギュンは耳が聞こえないから口もきけず、表情だけで悲劇のターゲットになってしまうという・・・特に怯えたような目の表情が印象的。

シン・ハギュンは『JSA』ではソン・ガンホと一緒に北朝鮮側の兵士、『ガン&トークス』では、殺せと言われた女の人を好きになってしまって戸惑う殺し屋、『地球を守れ!』では正気と狂気がぐらぐら揺れる青年と、さわやかな笑顔よりも、戸惑い、怯え、狂気といった表情をとても綺麗に出せる俳優さんだと思います。

ですから、シン・ハギュンは口はきけなくても何を考えてるか比較的わかりやすい素直な青年です。もし耳が聞こえ、喋ることが出来たならば、きっかけとなった悲劇は起きなかったわけだし、「そんなつもりは全くなかった」という弁解も出来るはず、なのに出来ないから、どんどん追いつめられていくやるせなさったら。

だからますます悲劇性アップなのですが、とにかく骨があって、クールで、非情で・・・というスタイルを貫き通した点が、悲劇を感動に昇華させています。そういう手法が上手い監督ですよね。『JSA』も『オールド・ボーイ』も何の為の戦いや復讐か・・・というむなしさの出し方、もうヒリヒリしているんです。

悲劇というのは後味悪いものかもしれません。しかし何故、今でも、シェイクスピアをはじめ「悲劇」がこんなに多いのか、なくならないのか・・・その点を考えると、人間が感情というものを持つ限り、負の感情というものがあり、光があれば影は必ず出来る、悲劇はなくならない、という現実を見つめることになると思うのです。ハッピーエンドばかり、夢ばかり追っているのは、単層的で一種の逃避という負の行動じゃないかとも思います。そういう厳しい真面目な視線は相変らずですね。

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