KARAOKE 人生紙一重
2005年5月10日 銀座ヤマハホールにて(試写会)
(2005年:日本:監督 辻裕之)
人と違うことをする、人が考えつかなかったことをするって、やはりその裏にはドラマがある、という映画。
これは井上大祐というカラオケを発案した人のサクセス・ストーリーではあるのですが、映画が描きたかったのは冒頭とラストの星野仙一元監督のナレーションなのではないでしょうか。
「毎日、頑張っているニッポンのお父さん、頑張れ!」・・・これです。
主人公の大祐は60年代、ロカビリーに憧れて家を出るけれど目が出ず、流しをしているときに歌う客の伴奏をしながら、これを機械でできたら?という発想にたどりつく。そこら辺はてきぱきと話はすすむし、大祐の両親、大阪でお好み焼き屋をしている宇崎竜童と室井滋の両親のしたたかぶりっていうのが笑えるのです。
また、行き詰まった大祐を、助ける歌手、千本木昌夫こと千昌夫なんかは、とてもいい味だしていました。千本木昌夫が歌う『星影のワルツ』のシーンは圧巻。
また、弁護士のお嬢様を好きになって、結婚するまで・・・そして影で支える妻を吉岡美穂。
しかし後半は、ナレーションにあったお父さん頑張れ、という主張の流れになっていき、実は、カラオケを発案して大成功のはずの大祐には・・・という意外さがあっても話がそれていってしまう。
そこに話を持っていくのであれば今や世界の共通語になったKARAOKEというものの偉大さというものが際だってくると思います。
ちょっと「頑張れ」連発しすぎです。
頑張れ、という言葉は励ましとしては一番無難な言葉かもしれませんが、反面、なんて曖昧で抽象的なんでしょうか・・・と普段から頑張れを使わないようにしている私は、スクリーンから、連発される「頑張れ、頑張れ」には説教くらっているような気持ちになりました。
例えば、病気でうんうん唸っていてどうにもならない人に「頑張って、頑張って」と言うのはある意味、残酷で無神経です。
佐々部清監督の映画『また陽はのぼる』というビデオのVHSを開発した話は、「頑張る姿」を雄弁に映像で語っていました。言葉にすることはない。
普段からお気楽に頑張れ、頑張って!って無意識に使っている人には何の違和感もなく、むしろこの映画に励まされるでしょう。
そうだ、頑張らなくちゃ!って。頑張れ映画です。
ちなみに私は頑張って、と言いたい時には、「呑気にね」という事にしています。あと、頑張っているのはお父さんだけ?お母さんも子供も、じゃないの?
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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