オーギュスタン 恋々風塵

オーギュスタン 恋々風塵

Augustin, Roi du Kung-fu

2005年6月21日 渋谷ユーロスペースにて

(1999年:フランス:89分:監督 アンヌ・フォンテーヌ)

パリで孤独な男と中国から逃げてきた女性が出会う。

しかしそれは燃え上がるような恋にはならず、言葉をかわしているだけ。

主人公のオーギュスタンは、役者志望ではあるけれど、家族は描かれません。家族という場から断絶された一人の男。

しかも、他人と接触することができないというアレルギーがあるため、女性とつきあうのも無理なよう。

私はこの無表情で一人で行動するオーギュスタンの姿がとても良かったですね。

誰にも頼らず、カンフー映画、ジャッキー・チェンの『酔拳』を熱心に観ているうちに自分もカンフー役者になりたい、と安直に思ってしまい、本場で習う・・・とかいいながら結局、パリ13区の中華街に自転車で移動するだけです。

そこで出会った鍼灸師の美しい中国女性、リン。(マギー・チャン)質素な身なりながら、上品感が漂う。

そんな2人が親しくなるといってもとても「奥手」なつきあい方。でもそれがとてもしんみりしていて、しみじみとする。

家族を捨てた2人が、それだけで近づくことができるのか・・・・そんな現実をとても柔らかい目で見つめています。

出てくる人、皆、「どこかかから逃げてきた人」・・・・House is not home.という言葉があるように、家があってもそれが即、家庭ではない。

オーギュスタンとリンのそれぞれの着地点、それは結果的には幸せなのではないでしょうか。

結婚とか、仕事とか、しがらみにしばりつけられて息苦しくなっている人にひとときの安らぎを。

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