姑獲鳥の夏

姑獲鳥の夏

2005年7月21日 丸の内TOEIにて

(2005年:日本:123分:監督 実相寺昭雄)

この原作が、映画化されると聞いて、監督が実相寺昭雄だと知った時、やっぱり『帝都物語』を撮った監督だし、適任だと思いました。

実相寺昭雄監督は、この映画の世界をほとんどセットを作って、作り上げてしまった所がやはり、監督で正解だったと思います。

原作は、自然さよりも、正に、セットで作り上げられたような雰囲気を持っているからです。

映画を見ている時も感じて、後で、パンフレットを見るとわかるのですが、人物が正面から撮られているシーンに混じって、斜めにかしいで映っているというシーンがたくさんあります。

原作は、その膨大な薀蓄に面白さがあり、また登場人物達の緻密な関わり合い・・・というのがこのシリーズの面白さのひとつでありますので、文字で表した事をそのまま映像には出来ないので、マニアな原作ファンの脳内キャスティングというのは読者の数だけあるはずで、映画はその一例にすぎない。

それを、即原作につなげて非難するのは狭量ですよ。苦言を呈する気などさらさらありません。

原作は原作、映画は映画。それはそれ!これはこれ!なんです。

映画としてどれだけ楽しめるか、という点では私は満足です。

京極堂役の堤真一は、映画で短くなっているとはいえ、最初の1シーンでえんえんと喋る長台詞の所は、「早めに台本を暗記した」そうです。

堤真一の声は、発音が明瞭で、聞き取りやすい。そして低い声で、ゆっくり喋るのでますます聞き取りやすい。

映画を見ている間は、目と耳が同時に働いている訳ですから、長台詞というのは、演劇的な難しさがあります。そこは舞台で活躍した堤真一であります。

京極堂の家が、古本屋で、二階が吹き抜けになっている、というのは、原作では想像出来なかったことで、今回映画で、見事な京極堂の家のセットに感心してしまいました。

人気原作ものが映画化になると、いつも原作を大事にしていない、という勝手な文句が飛び交う。この映画も同様。

確かに、原作が人気だと、映画もそれだけたくさんの人が観に来る可能性は大でしょう。

しかし、その分、原作からの「きめつけ」が邪魔をするという良い例かと思います。原作にとらわれて「映画」を観ることが出来ないのは悲しいことです。

この映画から、原作の世界に入っていく人だってたくさんいるはずですが、自分が愛する原作の世界を可愛がるあまりの暴言はうるさいだけです。

私は、あまり自分なりの理想のキャスティングというのは考えたことがなかったです。

でも和寅の荒川良々、青木刑事の堀部圭亮なんかは、思わず、わ、イメージ通り!と感心してしまいました。

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